魔女の嘆き

 25話のコーネリアの心情についての捏造です。(短いです。)
 よろしければご覧下さい。

 いつも私は気付くのが遅い。
 兄上が善意を装い恐怖で人を支配しようとしたことを知っていた私なら、ルルーシュが悪意を装い人を護ろうとしている事に気付けたはずだ。
 善意と悪意が紙一重だと兄上の真意を知った時に理解していたのに。
 私はナナリーの決意にも気付けなかった。
 まだ幼いあの子は非道な振る舞いをするルルーシュを止めたいだけなのだと、表面的な部分しか見なかった。
 実際は私などより思慮深かった。戦いの後を、世界の行く末を見据えていた。
 ユフィの仇だと、復讐心ばかりが先行して私はルルーシュを見る目を曇らせた。
 アレは私より十も年下だったのに。
 情けない姉だ。ギアスの事を全て調べたつもりで、全て知ったつもりでアレの本心を押し測ろうとしなかった。
 ユフィが特権を手放してまで日本を作ろうとした本心にも気付けなかった。
 枢木はルルーシュの嘘を見破った。事実を語る言葉に潜むルルーシュの苦悩に気付いたのに。

 ゼロが現れた瞬間、お前の悲痛な叫びが聞こえた気がした。
 マリアンヌ様が亡くなられ、父上に捨てられ、ナナリーを護りながらブリタニアから隠れて続けていたお前は世界が憎かったはずだ。
 私はそうだと思った。思い込んだ。
 悲しみと絶望の中でお前は何を見つけたのだ?

 私は走りながら問い掛ける。答えは返らないとわかっていても。
 だがおまえが望んでいることは分かった。だから私は演出しよう。
 悪逆皇帝ルルーシュを。
 白い皇帝服を塗らす赤い血が鮮明に示す。
 ルルーシュに縋り付き号泣するナナリーに心が締め付けられる。
 お前がナナリーに赤い服を着せた理由がわかったよ。
 ナナリーがもしも気づいたらお前に縋るのはわかり切っている。
 世界の敵の死を嘆くナナリーを気づかせたくなかったのだろう?
 だから血の色が目立たない様に赤い服を着せたのだろう?
 人々の目を二人から少しでも逸らそう。
 それが私が姉としてお前に出来ること。
 誰にも譲る気はない。

「魔王ルルーシュは死んだぞ!
 人質を解放しろ!!!」

 私の号令の下、人々が一斉に駆け出し歓声を上げる。
 解放された喜びにゼロの名を呼び続ける。
 枢木、お前は仮面の下で泣いているか?
 私にはゼロが悲しみの象徴に見える。
 英雄と讃えられるゼロの悲哀が凛とした立ち姿から滲み出ているように思えた。

 私に泣く資格はない。
 ブリタニアの魔女は泣いてはいけない。
 ルルーシュ。お前の言葉通りだった。
 未来はお前の名と共にあった。
 お前が世界の未来を握っていたんだな。


 魔王の死に魔女は心の中で涙を零した。


 END


 本当にコーネリアがあの瞬間ルルーシュ達の真意に気づいていたかはわかりません。
 けれど態々ルルーシュを『魔王』と称したあの言葉は、ルルーシュの行動理由に気づいていた事を匂わせているのかもしれないと思いました。
 TURN23の決戦の時、ルルーシュの言葉も気になってまして・・・

「世界はブリタニア唯一皇帝ルルーシュによって破壊され、然る後に創造されるだろう。」

 この言葉はルルーシュによって創造されるとも、ルルーシュが破壊した後に誰かが世界を創造するとも取れるのでは?と思っていました。ルルーシュ達が目指しているものが何なのか大方の予想はついていたからこそ気になっていた言葉です。
 改めて見直すとコードギアスは脚本演出共に見事だと思います。
 最近頭の中でその後のキャラクターが浮かんでは消えを繰り返してます。
 ラクシャータとヴィレッタとか、何十年も後のカレンとC.C.とか、ナナリーとコーネリアの対峙とか、スザクの最期とか、お墓参りネタなんかも・・・・・・・・・
 その一方で、SE4ネタスザルルギャグが浮かんでいる節操なしです。
 一度後日談ネタを封印してまた筆が止まっている食卓とギャグの方をと思いながらも出勤時間を利用して後日談ネタをメールにぽちぽち打ってるSOSOGU。

 誰か止めてくだひゃい。


 (初出 2008.10.3)
 2009.3.8 ネタblogより転載