C.C.様にお願い!

R2のTURN4のその後ネタ。
もちろん捏造v

ルルーシュの「ボロ雑巾」台詞には笑いました。
そしてロロがとっても愛おしい☆

《ナナリーの居場所を奪った奴を許すものか!》

 ルルーシュの心の声(電波)を受け取った灰色の魔女は薄く笑う。

「アイツは重度のシスコンだったな。」



 * * *



 自分の存在理由を自分自身で否定した。
 ロロはそんな不安に押し潰されそうになりながらコクピット内で自身を抱き締めた。
 右手にはお守りのように持ち続けている携帯電話。ストラップ代わりにつけられたロケットがクルクルと回りロロの目に映る。
 これは本来、ルルーシュが実の妹であるナナリーの為に用意したものだった。
 記憶を改竄され妹を失ったルルーシュの監視と身体が覚えている記憶を補完する為にロロ・ランペルージは作られた。
 身体が覚えている記憶と言うものは厄介なもので脳は認識していないのに無意識範囲で身体が慣れた行動を繰り返す。
 工事でいつも使っている道が使えなくなったにも関わらず、足が知らず知らずの内にいつも通りの道順を辿ってしまうのと同じだ。
 ルルーシュにとって最愛の妹ナナリーに愛情を注ぐことは当たり前だった。
 その彼が一人で生活すると無意識のうちに世話をすべき人間の為にいつもと同じ行動とるだろう。
 食事も知らず知らずの内に二人分作り、朝の挨拶も無意識のうちに誰かを迎える構えを取る。
 最たるものがロロが受け取った誕生日プレゼント。
 もし偽りの弟がいなかったらルルーシュはもっと早い段階で記憶を取り戻していただろう。
 無意識に取った行動に疑問を覚え、思案し最終的にはギアス能力を取り戻す。
 それはロロ達機密情報局にとって不都合なものだ。
 魔女を誘き寄せる餌には普通の人間として生きていて貰わなければならない。
 絶対遵守のギアスに小さなテロリストの集団を無視できない一大勢力へと成長させた手腕と頭脳。
 そんな人間をヴィレッタ達だけで飼いならす事など出来はしない。
 牙を奪い取って初めて機密情報局は対魔女仕様の罠を仕掛ける事が出来たのだ。
 初めはただの任務。ロロはそう考えていた。

《だけど・・・。》

 ロロは唇を噛み締める。
 ルルーシュと生活するまでロロに家族はいなかった。
 そもそも自分が何処から来たのか、誰から生まれたのか、ロロは知らない。
 あるのはギアス能力と任務のみ。
 誰一人ロロに愛情を注いでくれる者はいなかった。
 ルルーシュに会うまでは。

『お前が弟だから。』

 ロロを庇ったルルーシュはそう言ってくれた。
 誰一人家族だと言ってくれた事はない。
 ルルーシュは自分がブリタニア側の人間である事を知っている。
 これまで魔女捕獲の為に騙し続けていた事も全て察しているだろう。
 そして今、ロロはブリタニアから離れてしまった。
 任務遂行に失敗。しかもゼロに手を貸した事実はブリタニアへの裏切りを示している。
 もうロロには、全てを知りながら弟と呼んでくれたルルーシュ以外何も残っていないのだ。
 確かに学園での生活は心地良かった。
 ナナリーに注ぐはずだった愛情は全てロロに注がれた。
 毎日の食事もロロの気分に合わせて作ってくれた。
 日曜の晴れた日には二人でシーツを洗って、馬の乗り方がわからない自分を支えてくれて、クリスマスには生徒会のパーティーで一緒に祝った。
 あの時も絶対に嫌だと言っていたトナカイのきぐるみをロロが一緒にと強請ったら渋々ながら受諾してくれたのだ。
 不本意だと顔に書いてあるのにロロがお揃いだねと笑うと仕方ないなとルルーシュも笑ってくれた。
 写真を撮る時は陰鬱な気分になるのか背中を向けていたが、丸く垂れた肩がとても可愛らしく人間味溢れる姿だった。
 そして今、ロロは今喪失の恐怖を知った。

《もしも兄さんを失ったら今度はどうなる?》

 今度こそロロは全てを失う。

《イヤ・・・だ・・・・・・イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダっ!!!》

『ルルーシュが欲しいか?』

 突如頭の中に声が響く。
 慌てて周囲を見回すが周りには誰もいない。
 当り前だ。ロロはまだヴィンセントの中にいる。
 こじ開けられた様子もなく人の気配は全くない。
 けれど声はまた聞こえた。

『ルルーシュが欲しいのならば手段をやろう。』
「この声は・・・まさか!?」

 脳裏に浮かぶのは灰色の魔女の異名を持つ少女。
 モニターに目を向けるとそこには薄く笑みを刷いた黄緑色の髪の少女がいた。

「C.C.・・・なのか?」
『これは契約。手段をやる代わりに私の望みを叶えてもらう。』
「僕は既にギアスを持っている!」
『勘違いするな。与えるのは力ではない。手段だ。
 ルルーシュの隣。ルルーシュの笑顔。ルルーシュの愛情。
 ナナリーがいない今なら独り占めに出来る。
 それだけの想いがあるのなら・・・・・・。』
「契約・・・と言ったな。お前の望みは何だ!?」
『私が聞きたいのは契約を結ぶか否かだ。』

 迷っている時間は無い。

《これは賭けだ。》

 魔女の目的が何であれロロに選択権はなかった。

「いいだろう。結ぶぞその契約!」



 * * *



 黒の騎士団メンバーの救出に成功。
 だがルルーシュには喜びを分かち合う時間は無かった。
 監視の目を掻い潜りながらの今回の作戦に残り時間は無かったのだ。
 動揺しているロロを何とかヴィンセントから降ろし部屋に戻ったルルーシュは一息吐く間もなく食事の支度を始めた。
 ロロは部屋に閉じこもったまま出て来ない。

《まあ、当然だな。》

 ロロは自分がブリタニアを裏切ったと思っている。
 生まれてからずっと暗殺向きのギアス能力故に使われてきたロロにとって、自分の存在価値を否定する行動は精神的な混乱を極める出来事だろう。

《だが違う。裏切ったのでは無く裏切るように俺が仕向けたのだ。》

 全てはルルーシュの思惑通り。
 情報機密局にあったデータの表情と弟を演じている時の表情の差ははっきりしていた。
 調べれば家族のいない少年。
 一年間ルルーシュと共に暮らした事で芽生えた感情に彼はまだ気づいていない。
 気づけば直ぐに摘み取られてしまいそうな弱々しい芽は今日、成長の兆しを見せた。
 今はその感情をうまく利用すればいい。

《ふん・・・直ぐにでもナナリーを助け出しこの場から追い出してやる。》

 酷薄な笑みを浮かべじゃがいもを剥く。
 手なれた手つきで人参をイチョウ切りにし玉ねぎを刻んだ。
 時間がないがカレーにしたのはロロが直ぐには食べられないだろう事も考慮しての事。
 戦闘で疲れた体は埃に塗れている。
 直ぐにでも洗い流したいがそんな事をしては監視が怪しむかもしれない。
 鍋が煮立ち5分ほどしたところでルルーシュは火を止め鍋を下ろした。
 まだ熱い鍋の中は全く煮えていない。
 ルルーシュは鍋をバスタオルで包んでテーブルに載せた。

「これでよし。一時間は置いておくとして・・・シャワーでも浴びてくるか。」
「兄さん。」

 突然響いた声にルルーシュは驚いて振り返る。
 気づけばロロが部屋着に着替えて立っていた。
 弱々しい微笑みにルルーシュも微笑み返しながら答える。

「ゴメン。夕食はもうしばらく待ってくれ。
 今日は疲れただろう? 先にシャワーを浴びて・・・。」
「兄さん。これ・・・。」
「なっ!?」

 差し出されたものにルルーシュは驚愕する。
 掌に乗るそれは翼を広げた鳥を模した紙。

《ナナリーがよく折っていた鶴!?》

「教えてもらったんだ。色々ぐるぐる考えちゃう時に精神統一にもなるからって。」
「精神統一?」
「手が覚えちゃうくらい折ればの話だけどね。
 千羽折れば願いが叶うとも聞いたから・・・これから少しずつ折ろうかなって。
 これ、リビングに飾ってもいい?」
「それは!」
「兄さんの願いが。」
「!?」
「新しい未来が兄さんにも・・・。」

 涙が一筋頬を伝う。
 ロロが初めて見せた涙にルルーシュは動揺した。

《拙い! 監視カメラが!!
 ここでロロの動揺を鎮めないと俺の記憶が戻っている事がバレてしまう!
 揺さぶり過ぎたのか?
 だがここまで効果があるとは・・・しかも折り紙なんて一体何処で。
 今までナナリーの行動を真似る事は無かった事からしてブリタニア側からナナリーの趣味が伝わったとは考え難い。
 では偶然か?
 しかしイレブンの文化だと折り紙に見向きもしないブリタニア人に囲まれながらそれは・・・。
 いかん、そんな事よりも目の前のロロだ。》

 懸命に思考を抑え目の前で泣く弟を慰める事に専念しようとルルーシュはロロの肩を抱きながら言った。

「少しキツかったか? 今度は気分転換に別の所に行こう。」
「兄さん・・・どこにも行かなくて良いよ。
 その代り、今日は寝るまで手を繋いでてくれる?」
「手を?」
「怖い夢、見てしまいそうな気がするんだ。」

 涙を指で拭いながら答えるロロのセリフに想いだす。
 ナナリーが以前、同じ様な事言っていた事を。

《偶然か!? それにしては出来過ぎの様な・・・。》

「本当は一緒に寝て欲しいんだけど、16にもなってそれはやっぱり・・・・・・。」

《微妙にずれたな。やはり偶然か。》

「駄目、かな・・・・・・?」

《うっ!》

 捨てられた仔犬の様な目にルルーシュはまたも動揺する。
 ここで断るのは簡単だ。
 だがルルーシュはこれからロロを精一杯利用する予定なのだ。
 ここで機嫌を損ねてはこれからの計画に差し閊えが出る。

《そうだ・・・計画の為にもここはロロを甘やかしておくべきだ。》

 自分に必死に言い聞かせルルーシュは微笑みを浮かべた。

「わかった。今日は俺の部屋においで。枕は自分の部屋のを持ってくるように。」
「ありがとう兄さん!」

 了承の意を伝えた瞬間の弟の喜びようにルルーシュはちくちくと痛む胸を抱え考えた。

《冷蔵庫の中にデザートになるものはあったか・・・?》

 思い浮かぶのはロロが特に好んだデザートの数々。
 しかしルルーシュは気づいていない。
 無意識に浮かんだ考えと自身の計画との矛盾点に、ルルーシュ・ランペルージはまだ気づいていなかった。



 * * *



 一方、中華連邦総領事館内では・・・・・・

「ちょっとC.C.! またピザなんて頼んで・・・お金はどうしたのよ!!」
「大丈夫だ。伝手があってそいつに払って貰っている。」
「またゼロにたかってるの!?」
「違う。これは正当な契約による報酬だ。」
「はぁ!?」

 何を言っているのか分からないと言った様子でカレンは首を傾げるがC.C.は答えない。
 ピザに囲まれた黒服の魔女はピザを口にし薄く笑う。

『重度のシスコンと言うことはブラコンの素質もあると言う事だ。
 過去を振り返ってみろ。
 これから私が言う手段の有効性がわかるはずだ。』

 偽物の弟が何であろうと魔女には関係ない。
 自分を捕えようとしていた者であっても使えるものは何でも使う。
 それがC.C.のやり方だ。

 ぴぴっ☆

 テーブルの片隅に置いた携帯が鳴る。
 届いたメールを一瞥し魔女は嗤った。

「どうやら上手くいったようだな。
 これで暫くはピザが食べ放題だ♪
 次はどんな方法を教えてやるべきか・・・☆」

 送信元の名は無い。
 けれどそのメールの送り主が今、ルルーシュに添い寝してもらっている事をC.C.は知っていた。


 END



 ルルーシュが見せ掛けとは言えC.C.売ったのだからその逆もありだと思います。(笑)

 何だか黒いルルーシュが愛おしいのは何ででしょう。
 そんでもってラストのロロがすんごく可愛く見えた。
 セリフは無くても皆勤賞のスザク。
 まともな出番をお待ちしています!(ジノ&アーニャ含めて!)

 (初出 2008.4.28)
 2008.9.7 ネタblogより転載