貴女と俺は似ている

 珍しくシリアスで書きました。
 ルルーシュの独白。
 特に意味はありません。
 書きたいままに書いた代物ナリ。

 手が届くより先に体は空を舞った。
 差し出された指先で最愛の妹は叫んだ。

『スザクさん!』

 この瞬間の衝撃を何と言い表せば良いのだろう。
 わかっている。
 ナナリーは何も知らない。
 俺のこともスザクのことも。
 知られたくない、知らせる必要もないと俺はあの子に何も告げなかった。
 ゼロのこともギアスのことも、スザクの今の地位が何を犠牲にして築き上げられたものなのかも。
 言えばあの子は迷っただろう。
 けれど言わなかったのは恐れよりも何よりナナリー自身に道を選ばせたかったからだ。
 スザクの時と同じように、告げずに選ばせたかった。
 同情や慰めで道を選べばいつか後悔する。
 優しい世界を齎す為にはナナリーの意思を捻じ曲げてはいけない。
 それは正しい。けれど俺は同時に間違った。
 スザクに負けた時、過去の自分に負けたと自覚していたのに・・・

『過去のナナリー』を忘れられなかった

 そして同時に行方不明になった異母姉を思う。
 姉上はあの時どう思ったのだろう。
 ユフィが行政特区日本設立を宣言したあの時。
 武人でありブリタニア皇族の倣いである異母姉が許すはずの無い特区設立は、当然許可はおろか相談すらされなかったのだろう。
 その後、協力したのは既に宣言したものを無かった事には出来ないという建前と妹可愛さゆえ。
 けれど、

 同時に憎しみも覚えたのではありませんか?
 大切に大切に守ってきた妹に裏切られたと感じませんでしたか?

 盲目的に愛し、悪意や敵意から守り抜き真綿に包むようにして慈しみ続けてきた貴女と俺は良く似ていましたね。
 けれど少し距離を置けば・・・俺から見れば貴女のユフィへの対応は間違っていた。
 人形ではないのだから彼女にも意思が存在する。
 ただ守られるだけの生き方をユフィは選ばない。
 だから教えなくてはいけなかった。
 世間がどれだけ辛く厳しいものなのかを。
 彼女達が思っているほど世界は優しく変えてはいけないのだと。
 俺達は身体を張って守り続けてきた。
 それと引き換えに得たものは大切な人を一番置きたくない世界に追いやる未来。

 俺は反逆者ゼロ
 貴女はブリタニアの魔女

 立場は違えど俺達は似ていた。
 妹を慈しみながらもどこか愛し方を間違えていた。

 姉上。
 今、とても貴女に会いたい。
 今なら分かる気がする。
 あの日あの時の貴女の悲しみと絶望を。
 けれど会いたくない。
 深い闇に完全に閉ざされるような気がして恐ろしいから。

「兄さん。」

 ああ声が聞こえる。
 偽者の弟の声。
 だけど気遣わしげな声にどこか愛しさも感じる。

 この手を取れば俺は救われるのでしょうか?
 それとも・・・・・・

 世界に巣食われるのだろうか。


 END


 前作から良く似た姉弟だと思ってましたがR2でダメ押しされましたね。
 そんな訳で突発的に書きたくなったルルーシュの独白。
 特に意味はありませんがふと思うIFのお話。
 ナナリーはスザクの今の地位がルルーシュを皇帝に売った結果だと知らないですよね。

 では兄がゼロでその親友であるスザクが地位と引き換えに兄を売ったと知ったら彼女はどんな答えを出したでしょうか?
 非常に気になります。
 ってか、ホント気付いて欲しいです。

 ・・・・・・・・・ロロ編も書きたいな☆

 (初出 2008.5.13)
 2008.9.8 ネタblogより転載