弟とメイドの攻防

11話ネタです。
ロロと咲世子の関係(SOSOGUの予想)についてギャグでまとめてみました。
多分普通に読めるギャグSSです。

 ゼロとしての責務を果たさなければならない。
 ルルーシュは100万人と共に一度中華連邦での足場固めのためにトウキョウ租界を離れることになった。
 例え情報機密局が自分の手の内にあるとしても学園の生徒の目までは誤魔化せない。
 どうあってもルルーシュ・ランペルージはアッシュフォード学園に残らねばならなかった。
 だが特殊メイクと変声機でルルーシュの形は真似る事が出来ても、彼の性格を理解し、口調・行動を真似る事のできる人物は限られている。
 しかもルルーシュのもう一つの顔を知る人物となれば更に絞られた。
 唯一全てをクリア出来るのは篠崎咲世子。
 女性的なルルーシュのスタイルを再現し、一年のブランクはあるものの彼の行動を把握している人物として彼女以上に最適な人間はいない。
 既にゼロの素顔を見せる事で信用を得たルルーシュは咲世子をロロとヴィレッタに引き合わせ、学園での対応を任せ中華連邦へと渡る事にした。
 とは言え、長い時間は誤魔化せない事はルルーシュも承知のこと。
 出発する直前、ルルーシュはロロと咲世子を呼び出し言った。

「じゃあ行って来るよ、ロロ。」
「気をつけてね兄さん。・・・早く帰ってきて。」
「わかってるよ。お前も体に気をつけて。」

 顔を覗き込むようにして微笑むルルーシュに咲世子は一年前までの兄妹の姿を思い出した。
 今、ルルーシュは偽者と知りながらもロロを弟と認めている。
 その事は最初に説明された。だが違和感が拭えない。
 何よりも目の前の少年は何か危険な、嫌な感じがする。

《もしもルルーシュ様に害をなすようであれば・・・。》

 無表情のままロロを警戒する咲世子に気づいているのかいないのか。
 ルルーシュは咲世子にも向き直り話し始めた。

「咲世子さん。後は頼みます。
 基本、人間関係が円滑に整えられれば問題ありません。」
「ルルーシュ様。」
「はい?」
「敬語はお止め下さい。今の私達は以前と関係が変わりました。
 私は黒の騎士団の団員。ゼロの部下。
 貴方は黒の騎士団の総司令官。私の上司です。
 ならば他の団員と同じように命じて下さい。
 昔の様に接して下さるのは嬉しいです。けれど、今ゼロとして動くのであれば尚更けじめは必要です。」
「・・・・・・そう、ですね。」

 咲世子に言われて思い出す。
 以前、彼女に敬称をつけて呼ぶ時にはいつもナナリーが傍にいた。
 今ルルーシュの傍にいるのはロロ。状況は変わっている。
 ロロには弟として接すると決めたが、ナナリーを忘れたわけではない。
 ならば切り替えは必要だろう。
 一息吐いてルルーシュは瞑目する。
 次に目を開いた時には咲世子を気遣う色は消えていた。

「では咲世子。ルルーシュ・ランペルージを演じ学園の異変を敵に気づかせるな。
 主な指示はロロに任せる。必要ならばヴィレッタにも協力を要請しろ。」
「承知しました。」

 深く礼をする咲世子を確認するとルルーシュはゼロの仮面をつけた。
 ここから先は彼の素顔を見せてはいけない者達がいる。
 もうルルーシュは振り返らない。ゼロとしての役目を終えるまでエリア11には戻ってこないのだ。
 寂しさを感じドアの向こうへと姿を消す兄を見送りながらロロは寂しさを滲ませながらも健気に叫んだ。

「行ってらっしゃい兄さん!」

 ロロの言葉に肩越しに手を振りルルーシュは完全に姿を消す。

 ひゅろろろぉおおお〜〜〜

 直後、部屋の気温が下がった。
 明らかに2・3度下がった気温にロロと咲世子は全く気づかないように互いに向き合う。

「ではよろしく『兄さん』。
 兄さんはああ言ったけどちゃんと出来るのかな?」

(たかがメイドのくせに兄さんに大仕事任されたからって図に乗るな。
 一年も兄さんの傍から離れていたくせに何がお任せ下さいだ。)

「こちらこそよろしく『ロロ』。
 これまでの経験を活かし、ゼロが望む最高のルルーシュ・ランペルージを演じてみせるよ。」

(ナナリー様の身代わりで入った偽者のくせに生意気な。
 こちとら何年もお二人の傍に仕えているのよ。
 高々一年傍で監視してたくらいで出しゃばるな。)

「へぇ、随分な自信家だね。
 当然、『今の兄さん』の好みや仕草を理解しているんだろうね。
 中途半端な演技をしたらただじゃ済まないよ。」

(兄さんに過去の人間なんか必要ないんだ。当然ナナリーも。
 モドキが傍にいるだけでもイラつくんだから足引っ張るような真似したら消してやる。)

「勿論ですよ。
 それより顔が引き攣っていますよ。
 ルルーシュ様の弟もあろう方が他人に本音を知られるような真似はしないで下さいね。」

(暗殺者あがりがルルーシュ様に優しくされてつけあがってんじゃないわよ。
 本性を暴いてここから追い出してくれる。)

 くすっくすくすくす・・・

 ふふっふふふふふふ・・・・・・

 冷えた笑い声が響く中、二人は歩き出す。
 完全に二人の気配が消えた後、物陰に隠れていたヴィレッタは二人が去った方向を見て深い溜息を吐いた。

「チームワークの欠片も無いあの二人をどうしろって?
 ルルーシュ・・・。」

 念の為に二人のフォローを頼むと言われていたものの咲世子と組むのが情報機密局の問題児ロロなのだ。
 秘密保持を理由に葬ったチームメイトは片手では数えられないほど。
 代わりのきかない咲世子が失態を犯せばフォローと称して抹殺する可能性がある。

「いや、それ以前に・・・。」

 あんな殺伐とした空気を放つ『ルルーシュ』とロロが学園に現れたら違和感でバレる可能性が高い。

《私にどうしろと言うんだルルーシュぅう―――っ!!!》



 * * *


 へっくしゅ!

 くしゃみを一発すれども所詮は仮面の中。
 マスクいらずで便利だと笑う玉城をカレンが締め上げ、神楽耶が心配そうにルルーシュことゼロを気遣う。

「ゼロ様、もしやお風邪を召したのでは・・・。
 喉に痛みなどは? 今は移動中ですしお休み頂いても作戦に支障はありません。
 お部屋に戻られては如何でしょう。」
「お気遣いありがとうございます。神楽耶様。
 しかし蓬莱島に着いたら直ぐに仮設住宅の設営や水・食料の確認、衛生面の完備などやる事は山積みです。
 大方の分担作業と指示を終えているとはいえ、微調整が必要なので移動の間に全ての調整を終えねば混乱をきたし作戦に遅れが出てしまいます。
 悪寒もありませんし、急に鼻がむず痒くなっただけですから風邪ではないでしょう。」
「では何方かが噂しているのでしょうか?」
「エリア11で我々を噂しない者などいませんよ、神楽耶様。」
「それもそうですわね☆
 ところでカレンさん。そちらの始末は着きまして?」

 笑顔で振り返る神楽耶の視界に映るのは簀巻き状態の役職未定の玉城真一郎。
 その玉城の上に座り笑うカレンに遠慮がちながらブリッジ内に笑いが伝染する。
 微笑みの絶えない黒の騎士団。
 その一方、エリア11では・・・・・・


「ヴィレッタ先生。最近ルルとロロおかしくありません?
 何かよそよそしいっていうか、笑っているのにお互いに笑っていないっていうか。
 聞いてると言葉の端々に棘っぽいのも感じるんですよね。このままで大丈夫か私、心配で・・・。」
「シャーリー。お前は一人っ子だからわからないだろうが家族であっても兄弟には色々あるんだ。
 普段仲が良くても喧嘩だってする。男の兄弟なら尚更だ。今は寄らず触らずそうっとしておいてやれ。
 今、あの二人を下手に仲裁しようとすると拗れるぞ。」

 ロロ達の様子のおかしさに心配する生徒会メンバーを説き伏せるはヴィレッタ・ヌゥ。
 彼女が今、エリア11で黒い笑いを披露するロロと咲世子のフォローの為に奔走していること。
 そして胃薬を持ち歩いては煽っている事を、ルルーシュは全く知らなかった。


 END


 ヴィレッタ先生へのお土産は漢方胃腸薬が最良ですね。

 ってなわけでちょっとだけ書きたくなった11話ネタのショートです。
 ロロってルルーシュの影武者してる咲世子さんを快く思っていないようなので対立する二人を書きたくなって書きました。
 今度アーニャ交えたロロルルっぽいものも書きたいな〜。でも食卓シリーズも書きたいな〜っていうか・・・書きたいネタの宝庫のギアス。時間の方が足りません。

 (初出 2008.6.25)
 2008.11.22 ネタblogより転載