本当にあった怖いギアス 〜その後の物語〜

 コードギアス 反逆のルルーシュR2のSound Episode2のドラマ「枢木の里・悪霊の宿・本当にあった怖いギアス」のその後のお話のアホ話です。
 傾向としてはルル受けなので苦手な方は読まれない方が良いと思います。

 悪霊退治を終えピザパーティーに興じるルルーシュ達。
 日が暮れてすっかり辺りが暗くなった頃、ピザを食べながら天子が誰もいない席に向かい声を掛けた。

「初めて食べたけど美味しいね。星刻。」

 天子としては無意識の行動だったのだろう。
 常に傍にいる彼は既に空気同然に馴染み過ぎていて・・・・・・

「あれ? 星刻は??」
「「「「あ゙。」」」」

 改めて認識するまで自分達の元々の目的や共に来た仲間の事を思い出せなかったのだった。



 * * *



 カラスも鳴かなくなったという事は、夜行性の動物達が動き始める時間と言うこと。
 初めての山。しかも慣れない野宿。
 段々と冷えてきた空気に真っ先に音を上げたのはロロだった。


 へっくしゅ へっくしゅ へっくしゅっ!!!

「おお、誰かがお前のこと噂してるぞ☆」

 ロロのくしゃみ連発に楽しそうにジノは声を上げる。
 だがしかし、ロロとしては面白くないどころか腹が立つ。

「この状況下でのくしゃみは普通、風邪を心配するものですけどねぇ・・・ナイト・オブ・スリー。」
「学校では身分関係なしって言っただろ。」
「ここ学校じゃないですし。」
「ロロ、君も軍人だろう。この位のことで音を上げていたら任務遂行は不可能だぞ。」
「兄さんに会うまで失敗したことなんてありませんよ。
 僕の任務は暗殺が主でしたから相手はいつも人混みの中。その日の内に任務を終えて温かいベッドで寝ていました。兄さん早く来て。兄さんお手製の温かいポタージュが飲みたいよ。」

 ツンと顔を背けて言い放つロロにそろそろスザクも拙いと思ったのかロロを窘めたが、ロロは兄の旧友であるスザクが気に入らない。
 兄の親友という立場にいたくせに皇帝に兄を売ってラウンズの地位を手に入れたスザクの事を良く思えるはずが無かった。
 ジノに対した時以上の、絶対零度の冷ややかな視線を投げ掛け答えると空に瞬く星を見上げ祈りのポーズで願いを唱える。
 それだけ見れば儚げな少年のささやかな可愛らしい祈りの姿に見えるのだが、先ほどまでの台詞に合っていな過ぎる。
 何よりも聞き逃せない単語があった。

「おいコイツ、今すごい物騒なこと言ったぞ。」
「機密情報局所属だから普通だろ。それにジノ、君もラウンズの一人。十分物騒な職業に就いているって自覚しなよ。」

 ジノの質問をあっさりスルーしてスザクは考え始める。
 ルルーシュの頭脳と行動力なら自分達の居場所を大まかながら検討をつけて既に捜索部隊を派遣していてもおかしくない。
 だが捜索隊が近くに来ている気配は無い。ナイトメアは皆動かないが機器の全てが全滅したわけではなく、レーダーは使えるのだがヘリやナイトメアの反応はないのだ。
 勿論レーダーも実は壊れている可能性もあるので断言は出来ないが・・・ルルーシュの捜索隊は出ていないのかもしれないという考えが頭に浮かびスザクは頭を振ってその考えを打ち消した。
 此処にはロロがいるし星刻もいる。黒の騎士団の仲間を見捨てるはずがないと改めてこの山からの脱出方法を考え始めると、多分この中で一番頭が良いだろう星刻が呟いた。

「天子様・・・悪霊の気配は消えたのはわかったものの無事の確認が出来ない。
 今すぐお傍に参りたいというのに。」
「君もロリコン本性全開してないで現状打開の方法考えてよ。
 僕の戦闘能力とルルーシュの頭脳と同等の力を持っているんだろう?」
「我が力は全て天子様と民の為にある。私欲に走って能力を乱用するなど言語道断。」
「こういう命がかかっている状況で私欲って言葉は当てはまらないと思いますが・・・。」

 ロロの言葉を受けてもダメだときっぱりはっきり言い切り天子の心配ばかりをする星刻からは溜息しか出ない。
 これはダメだとさっさと諦めスザクは星刻との会話を打ち切った。

「それはそうと悪霊の気配が消えたって本当なのか?」
「間違いない。あの禍々しい気配が消え去っている。
 その直前に悪霊の力が弱まっていくのを感じた。
 だが一体どうやって悪霊を消滅させたというのか・・・それだけがわからない。」

 今度はジノが能天気そうに星刻に問いかける。
 対する星刻が真面目にジノに向き合う姿に怒りを禁じえない。
 さっさと打開策を話し合いたかったのにとスザクはこめかみに浮き出る血管を俯く事で隠しながら拳を握った。
 そう・・・これ以上彼らの能天気さに巻き込まれないように会話に参加しないように・・・。

「肝心の枢木神社の跡取りは悪霊を封印するどころか復活させる始末。
 枢木卿からはその辺の答えは期待できませんね。」
「失礼な。ちょっと呪文を間違えただけじゃないか。」

 会話に参加しないようにと考えていたのはどこへ行った。
 そう問いかけたくなる程の素早さでスザクはロロの言葉に反論する。
 だがスザクの先程の行動を見れば信用など一片の金箔よりも軽く儚いもの。
 ジノも呆れた様子で答えた。

「あれを呪文と言うのなら世の中霊能力者だらけだ。あの中にその手の能力者なんていなかったし・・・。」
「兄さんもギアスを持っているけれど、あれは生きた人間相手の能力ですから悪霊にギアスは通じないですしね。」
「となるとやはりここは定番の方法を使った可能性がある。」
「「「定番?」」」

 三人の言葉にスザクは首をこっくりと縦に振り重々しく告げる。

「生贄。」

 戦慄が走った。
 それぞれの脳裏に浮かぶのはあの場にいた少女達と少年一人。

「あの中の誰かが犠牲になったって言うのか!?」
「ま・・・まさか天子様が!?」
「悪霊が貴方と同じロリコンなら考えられますね。婚姻可能な年齢の女性が通例ですからその可能性は低いでしょう。」
「悪霊が天子様の無垢な笑顔に血迷わないわけがないだろう!」
「他にも候補は沢山いただろ? 確か皇の・・・あの子はスザクの従姉妹だし可能性あるんじゃないか?」
「神楽耶は確かに巫女をしてたけどあの外見だから悪霊がロリコンじゃない限り選ばれないだろう。」
「それじゃアーニャも無事かもな。」

 かなり失礼な発言をしてくれる。
 この場にアーニャがいたら神楽耶の号令の下、ハドロン砲でジノ達を撃っていただろう。
 だが幸いな事に彼女達は此処にいない。
 静かな山の中、虫の声に囲まれながら四人は話を進めていく。

「生贄の条件に処女は必須ですよね。」

 ロロが確認するように問うとスザクは大きく頷いて答えた。

「当然だ。穢れ無き人間である事が大前提なんだから。
 尚且つ心も清らかで初心だと選ばれやすい。」
「そうすると最後のC.C.も除外されますね。初心という言葉とは程遠い魔女ですから。
 いつも卑猥な言葉を兄さんにぶつけて・・・くそっ! 今度アイツのチーズ君切り裂いてやる!!!」
「こらこらそこのブラコン。物騒な発言するな。二度目だぞ。」

 ロロがナイフを取り出し構えると同時にジノの突っ込みが入る。
 しかしスザクはそんな二人を無視して地面に木の枝であの場にいた少女の名を書いていった。

 天子 ×
 神楽耶 ×
 アーニャ ×
 C.C. ×

 生贄になりえない名の隣にはバッテン印。
 これであの場にいた少女の名は全てだ。

「「「「となると・・・。」」」」

 残る可能性は一つ。

「やはり天子様が危ないっ!」
「「「だから違うって言ってるだろこのロリコン!!!」」」


 ずごん!

 星刻撃沈。
 忠誠心と言えば聞こえの良いロリコン疑惑持ちの星刻の脳天に三人の拳が見事なタイミングで入った。
 スザク並みの戦闘能力を持った武人も精鋭三人の同時突っ込みには適わず見事に地面とキスしたままピクリとも動かない。
 だが三人は星刻に目もくれず騒ぎ出す。
 三人の脳裏に浮かんだのはあの場にいた最後の一人、ルルーシュしかなかった。
 正直言ってルルーシュは綺麗だ。恐らくは悪霊好みに晩熟でそういった面では擦れていない。
 元皇子という高貴な出自を加えれば生贄には最上の部類に入るだろう。
 問題があるとすれば性別だが・・・

 ロロはブラコン。
 ジノは常識知らず。
 スザクはスザクで神社のマニュアルすら知らない神職失格者の上にルルーシュ限定の狼である。

 そんな大前提など気にするわけが無い。

「ああああああ・・・どうしよう!
 兄さんが・・・僕の兄さんがぁ!!!」
「落ち着けブラコン。」
「というか君本当の弟じゃないだろう。」
「え、そーなの?」
「僕は間違いなく兄さんの弟だ!
 いつもご飯は僕の好み優先で作ってくれるし勉強教えてくれるし掃除や洗濯は一緒にやるし日曜日にはシーツを洗うついでに遊んだり乗馬教えてもらったり相乗りしたりお風呂だってたまに一緒に入るし誕生日プレゼントだってくれたんだから!!!」
「まて! 一部聞き捨てなら無いこと聞いたぞ!!」
「いいな〜。ルルーシュ先輩とお風呂かぁ・・・。
 あの人肌白くて綺麗だしこの間手を触ったらしっとりとした感触がしたのに頬擦りしたらさらさらっとした肌触りが絶妙でもっと長く抱きついていたかったのにスザクから呼び出しがあってさぁ・・・。」
「ジノ、手袋を用意しろ。決闘を申し込む!」
「兄さんに触れようなんて一千万年早いんだよっ!」
「君もだロロ! 僕を差し置いてルルーシュとお風呂に入るなんて一兆年早い!!
 懐かしいなぁ・・・ルルーシュが日本に来たばかりの頃は日本式のお風呂の入り方がわからないって言うからナナリーの介護の為に一緒に入ってたっけ・・・。」
「お子様の時期のお付き合いと一緒にしないで下さい。
 優しく泡立てたボディーソープで兄さんをふわふわのもこもこにする権利はもう僕だけのものなんだからっ!」
「なら仕上げは俺に任せておけ。先輩のお肌の手入れ☆ ローションでぬるぬるすべすべにしてやろう!」
「最後の最後にルルーシュのお肌を紅色に染めるのが僕の役目って事だね。それなら許可してあげよう。但しそれ以上は認めない!」
「「誰がお前に渡すかっ!!!」」

 本人不在のルルーシュ争奪戦を始める三人。
 今もヒートアップし続けており、このまま話が進めばその内命を賭けた決闘に成りかねない。

「そんな事よりも・・・・・・。」

 翌朝、ルルーシュ達が見つけた時には三人の屍が・・・という展開もありそうな争いの中、今まで沈黙していた人物がヨロヨロと立ち上がり乱入してきた。
 星刻復活。

「あ、もう起きてきたよ。」
「そのままロリコンは寝てて下さい。
 よろしければ僕が永久の眠りにつけてあげましょうか?」

 しゃきん☆

 春の微笑とナイフを取り出す冷たい金属音。
 素晴らしいまでの対比でもってロロが屠ってきたターゲットは数えるのも面倒臭いほどである。

「この星刻、天子様の幸せを見届けるまで命を終えるわけにはいかない。
 いや、そーじゃなくて。」
「何なんだ一体。早く結論を出せよ。」

 ジノが面倒臭そうに問うと星刻は眉間に皺を寄せて一瞬黙った。
 躊躇うかのようなわずかな間。
 スザク達は星刻が躊躇する理由に思い当たらず互いに顔を見合わせる。
 その間に星刻は意を決したのか、躊躇いながらも口を開いた。

「もしその・・・ルルーシュが生贄にされていたらもうこの世にはいないんじゃないのか。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!

 恐慌状態に陥った三人が叫びだす直前。
 バタバタとヘリのローターが回る音が響いた。

『ロロ! 無事か!?
 スザクにジノも一緒だな!!?』
『星刻〜!』

 拡声器を通して辺りに響くルルーシュと天子の声。
 よく見ればヘリの背後から蜃気楼が現れる。
 待ち望んでいた救援と、何よりも安否を気にしていた人の声に四人に笑顔が戻る。
 四人発見の連絡が入ったのか、アヴァロンと斑鳩もやってきた。

「兄さん!」

 幸い開けた場所ゆえ、蜃気楼は四人のいる辺りに降り立ちコクピットからルルーシュと天子が降りてくる。
 真っ先に星刻に駆け寄る天子を見送り、ルルーシュはロロへと歩み寄りながら話し始めた。

「ナイトメアは今から所属する各艦に収容させる。
 今回のみ番外編ならではのご都合的休戦協定を結んでいるから今は敵ではない。安心して良い。
 遅くなってすまなかったな。こちらも色々と立て込んでいて・・・。」

 本当は立て込んでいたのではなく思いっきり忘れていただけだが、そんな事をちらとも匂わせないルルーシュの微笑みは完璧だ。
 しかしルルーシュの予想を外して三人はルルーシュと取り囲むと一気に話し始めた。

「そんな事よりもルルーシュ!」
「そうだよ兄さん。悪霊に何かされなかった!?」
「先輩が悪霊の生贄にされたんじゃないかって俺達心配してたんだ!」
「は? 俺は男だから生贄になるはずが・・・。」
「そんな事だから兄さんはいつも狙われるんだよ!」
「悪霊が晩熟で綺麗な先輩を狙わないわけが無い。アーニャじゃ役者不足だし!」
「神楽耶も天子様もお子様だしルルーシュの美貌と比べたらランク外だって気づいてよ。」
「C.C.なんてもっと有り得ないよ。逆に悪霊をパシリにするに決まってるじゃないか。
 あああ服の上からじゃわからない。兄さん悪霊に何処触られたの?」
「よし剥こう。ルルーシュは弱みを見せたがらないからここは全力でルルーシュを剥いて実際に確認するしかない。」
「剥いたら直ぐにお清めしましょう。俺が洗ってあげますよ。先輩☆」
「ドサクサ紛れに兄さんに触らないで下さい。ナイト・オブ・スリー。
 いっそこの場で人生の終焉を迎えますか!?」
「お清めなら枢木神社に任せてよ。僕がルルーシュの身体を隅々まで清めてあげる!」
「エセ神官が何を言う。スザクは引っ込んでろ!」
「二人共々止めが欲しいようですね。そこに座って神に祈りなさい。僕が一瞬で終わらせて差し上げます。」

 人はこれを会話とは言わない。
 話しながら剥かれていくルルーシュは何が起こっているのかわからず必死に引き剥がされようとしているシャツを引っ張っているが、力の弱いルルーシュに対し軍人三人がかりのこの状況。少しずつ覆っている布地が減っていくのは当たり前と言える。

「ちょっと待て、三人とも・・・とにかく話を。」
『ゼロ様? そこを動いてはいけませんよ♪』

 ばちゅん!

 朗らかな声と共に光がルルーシュ達の直ぐ傍を通った。
 モルドレッドからのハドロン砲。
 見事に地面が抉れたのを見てルルーシュは血の気が引くのを感じた。

「か・・・神楽耶様・・・?」
『夫の貞操を守るのは妻の役目ですもの☆
 アーニャさんも制裁を兼ねてお手伝い下さるそうですわv』
「・・・あーにゃ?」
『ルルーシュ離れて。身内の恥は身内で雪ぐ。』
「「「キれてるーっ!!!」」」

 モルドレッドに追われて逃げ出す三人。
 漸く開放されたルルーシュは見るも無残な半裸姿。
 あまりの情けなさに崩れ落ちるルルーシュの頭に、白く清潔なタオルケットが掛けられる。
 誰かと思い振り仰げばそこにはC.C.がいつも通りのポーカーフェイスで立っている。

「こ・・・恐かった・・・。」
「アホかお前は。あっさりと貞操奪われそうになって、それでもゼロか?」
「・・・悪霊より恐かった。」
「いつの時代も強いのは生きている人間の方だ。恐ろしいのも当然生きている奴に決まっている。」
「C.C.・・・三人にあの呪文を使ったらどうなるだろう。大人しくなるだろうか?」
「さあな。生きた人間相手に試した事は無いが効くんじゃないのか?
 もしかしたら関係ないと跳ね除けるかもしれないが。」



 どごーん! ずがーん!

 静かな山を切り裂く破壊音。
 その内、枢木神社も吹っ飛ぶかもしれないなと思う本当にあった恐いお話である。


 END


 最初は書く気はなかったんですよ・・・。
 かなり勢いだけのお話なのでそのまま脳内のみのお蔵入り予定のお話でした。
 けれど24日の大阪インテでmirror wordsの朋さんのコピー本読みまして・・・なんか無性に書きたくなって書きました。
 これ書いている間、予定していた無料配布用のSSの執筆止まっている辺りがイタイですね。
 通販作業もストップしているのでこれUPしたら再び戻ります〜。


 (初出 2008.8.30)
 2009.3.8 ネタblogより転載