ルルーシュ・ランペルージの混乱 注意:こちらのお話は『枢木スザク准尉の溜息』のルルーシュサイドのお話になります。 先に『枢木スザク准尉の溜息』をお読み下さい。 それから・・・「義務教育中の人はできれば遠慮してほしいな☆」 と思う程度ですが【ソーユー】表現があります。至極温いですけどね。 |
背中は自室のベッド、目の前には部屋の天井と親友の笑顔。 一見するとプロレスごっこでじゃれ合った延長による体勢に見えるが実際はそんなほほえましいものではない。 《何だろう。酷く身の危険を感じる。》 部屋の主であるルルーシュはニコニコと虫も殺さぬ笑顔を浮かべる親友スザクを見てそう思った。 特に喧嘩をしたわけではない。 約束通り夜にルルーシュを訊ねたスザクを部屋に招き入れたら「それじゃ始めようか。」とベッドの上に引き倒されてこの状況なのだ。 喧嘩の要素など一つも思い当たらない。 寧ろ夕方突然であったにも関わらず頼まれるままに弁当を作ってやったので感謝されて然るべし。 《それでもこの身体に走る悪寒はなんなんだ!?》 ルルーシュは自他共に認める優秀な頭脳をフル回転させたが浮かぶのは病名ばかり、しかも症状がぴったりと当てはまるものはない。 《考えろ・・・この状況は不味い気がする。とにかくこの場を打破する手を考えなくては!》 しかし頑張って考えるルルーシュにスザクは時間を与える気はないらしく、笑顔を浮かべたまま手をルルーシュのシャツに伸ばしながら問いかける。 「考え事とは余裕だねルルーシュ。やっぱり君も慣れてるから?」 「慣れてるって・・・・・・何。」 「ナニ。」 「疑問に疑問で返すな。」 「答えたじゃないか。」 「今の何処がだ!」 「ルルーシュ、それ本気? それとも誘ってる?」 「だから!」 「僕らもう17歳だよ? コーユー事。」 言いながらも動かし続けていた手はシャツのボタンを全て外しきっており本格的に脱がそうとしている。 けれど途中で面倒臭くなったのか大きく開いたのみで白く綺麗な肌を辿り始めた。 それでも混乱中のルルーシュは自身の身に起きている事よりも情報整理を優先。必死にスザクの言葉を反芻し考え続けていた。 《17歳・・・年齢に何か意味がって!?》 ほぅわぁあああっ! 濡れた感触に流石に思考の海から浮上。 見れば胸元から顔を上げたスザクが哀しそうな残念そうな複雑な表情でこちらを見ている。 「ルルーシュ・・・色気無い。」 「おまっ!? 何やってる!!」 「えへv 少しは感じたのかな? 僕も同性相手は初めてだから不安だったんだけど良かった♪」 《初めて? 同性相手は??》 さわさわと遠慮なく肌を滑るスザクの手の感触にルルーシュは絶賛混乱中だった。とにかく動けない。動くべきなのに阻むべきなのに考えるよりも先に動くべき身体が錆びついたロボットの様に固まっていた。 その間にも事を進めるスザクは抵抗がない事をいい事に調子に乗っていく。首筋に感じたチリっとした痛みにルルーシュは自分を取り戻し改めて己の状況を見返した。 半端に脱がされたシャツは辛うじて腕で引っかかっている状態。 ボタンを外されたズボンはチャックが下ろされ緩んでいる。 胸はヌラヌラ光っていて濡れた感触がする。 そして先程感じた痛みとところどころ浮かんでいる赤い痕。 ひぃ! 「本っ当に色気無いねルルーシュ。」 「どこ触ってる!」 「触ってるって言うか握ってる」 「揚げ足を取るな!」 「・・・ルルーシュ、もしかして初めて? 状況まだ理解してない?」 「だから! お前は一体何をしている!!」 「セッ・・・・・・ふぐ!」 窮鼠猫を咬む そんな日本の諺がルルーシュの脳裏を過ぎった。 思わず蹴り上げた足がスザクの鳩尾にジャストミート。 鉄人スザクも流石にこれは効いたらしく動きを止める。 《今のうちに!》 この隙にとルルーシュはスザクの下から這い出てベッドから逃げようとするが蹴り上げた足を掴まれバランスを崩し頭から落ちそうになった。 けれど床が目の前に迫ったところで体が止まりそのままズズッと腰を掴まれ再びベッドに戻された。 スザクの足の間で体勢を崩している状態となったルルーシュはそのまま見上げるように後ろを見ると其処には優しく微笑むスザクがいた。 「悪い足だね、ルルーシュ。」 ぞくりと悪寒が背筋を走る。 首筋から頬へと少年でありながら軍で鍛えらた無骨な指が辿る。 《目が据わってる!》 とにかく不味い状況になりつつあると感じながらもルルーシュは蛇に睨まれた蛙のように動く事が出来なくなった。頭は動けと警告するが脳の命令が伝達されていないのか身体はピクリとも動かない。 ルルーシュが混乱している間にもスザクの手は動き続け再びルルーシュをベッドに横たえた。 「もう少しゆっくり進めようと思ってたんだけどね。」 「落ち着けスザク! 明らかにおかしいだろう!? これは生物学的には生殖行為に当たり、いや男同士だと生殖じゃないけど人間は他の動物のような発情期がないから精神的には恋人同士がやる事で肉体的に処理が必要な場合であっても普通は同性同士でやることじゃない!」 そう、幾らなんでもルルーシュとて気付いた。 先程のスザクが言い掛けた言葉と行為。 ルルーシュの常識では考えられなかったからこそ、何よりもスザクを友人と認識していたからこそ可能性の一つとして挙げられなかっただけなのだ。 だが気付いた以上は友として止めなくてはとルルーシュは必死にスザクを押し止めようとする。 だがしかし。 「何言ってるの。僕ら恋人だろ。」 《友情は何処へ行った!?》 ニヘラと笑いながら応えるスザクにルルーシュはこめかみに伝う汗を感じた。 先程目が据わっていると思ったのは気のせいではない。 スザクが突然変貌したのは確か。だがそのきっかけが思い当たらない。 「大丈夫。 どれだけ君の足癖が悪かろうと口が悪かろうとシスコンでナナリー最優先の人間でも気にしないから。」 《せめて性別は気にしろ!》 言い返したいが覆い被さってくるスザクに圧迫感を感じ喉下までせり上がっていた台詞を飲み込む。 とにかくいつもの笑顔が怖かった。 黒の騎士団のトップであるゼロも普段は17歳の少年。 しかもルルーシュは男同士の下ネタ話とは無縁な生活をしていただけに刺激は強く未知の世界を感じ必死に考えを巡らせた。 《落ち着け、とにかく落ち着くんだ。 そもそもどうしてこんな事になった? 確かスザクが急に弁当を作ってくれと言ってきて作ってやったら今夜来ると言い出して。》 《17歳と言っていたな。何かの暗号か?》 《ソーユー事というのもキーワードかもしれない。 だが何なんだ。》 《単に物事を示すとしたら思い当たるのは現在の状況。しかしあまりにも言葉が曖昧過ぎる。》 《情報が足りない。判断するのはまだ早過ぎる!》 《もう一度考えろ。17歳・・・これが恐らくは最大のヒント。》 《それよりもこの状況を打破する事が先だ。 スザクの身体能力と俺の身体能力とこの後起こり得る事態の可能性と部屋の状況全てを考慮して・・・。》 《駄目だどれも0.1%以下の成功率で現実的じゃない。》 《イレギュラーの可能性は?》 《それもありえない。クラブハウスは咲世子さんがきっちり戸締りしている。 彼女が俺の部屋に来る事はまずないしナナリーは既に就寝。 他にクラブハウス内に居るのはC.C.だ。》 《あの女が現れるなどまずありえない!》 「ねぇルルーシュ。僕もう限界なんだよね。」 気付けば足を抱え込まれている。 考え事をしている間にズボンは完全に脱がされ生まれた時の姿にされていた。 《もう逃げられない。》 この状態で逃げ出そうとすればナナリーが起きるし大騒ぎになる。 スザクは再び容疑者になるし今度こそ二度と会えなくなるかもしれない。 《それだけは避けなければ!》 目を瞑り数瞬の間にルルーシュは覚悟を決めた。 再び目を開いたルルーシュは妖艶さを漂わせ、細めた目は長い睫毛に彩られスザクを誘う。 形の良い爪が細い指を惹きたてる。美しいルルーシュの手がゆっくりとスザクの頬に触れた。 「お手柔らかに頼むぞ。明日は用事があるんだからな。」 「努力はしますよ皇子殿下。」 笑顔で額にキスするスザクの肩を抱え込みながらルルーシュは自他共に認める優秀な頭が弾き出した答えを反芻した。 《物は考えようだ。 ここでスザクを篭絡しておけばブリタニアを見放させる足がかりになるかもしれない。 また下手な女に取られることなく俺とナナリーの傍に留め置く事も可能。 どちらにしろ行為が避けられないなら明日の戦闘の為にも抵抗は止めて体力を温存すべきだ。 一応手加減はするようにと言ったし俺が協力すれば下手に体力を削られる事はないだろう。 冷蔵庫にドリンク剤を入れてあるし明日の朝一番に飲めば夜の活動に支障はないはず。》 だがルルーシュは大事な事を忘れていた。 スザクとルルーシュとでは基礎体力が違い過ぎる事。 この行為がルルーシュが想像するよりも体力を必要とし、何よりも同性同士では受け入れる側の負担は異性とのソレよりも重いものだという事を。 結果、ルルーシュ・ランペルージは翌朝深い後悔と共にベッドの住民となったのだった。 END 偶には裏っぽいものをと思いつつ本番を書けない上に全体的にギャグ調になるのはやはり根っからのお笑い好きのせいでしょうか。 あっさり食われたルルーシュ側の話も書きたくなって書いてみました。 また不燃物ですがお楽しみ頂けたなら幸いです。 2007.6.4 SOSOGU (2007.8.9 サイトにリンク) |