生理的に駄目なものは駄目なのです おまけ

 あの後のかぜっぴきの二人をどうぞ!
 風邪のひきやすい季節である事は十分理解していた。
 買い物から戻れば手洗いうがいは基本中の基本。
 栄養価の高い食事を心掛け、しかし栄養が偏らない様に野菜と肉、魚の比率を常に考え作っている。
 早寝早起きを実践し充実した毎日を送るルルーシュに隙は無い。
 そう・・・思っていたにも関わらず枢木家には風邪っぴきが二人寝込んでいた。
 スザクも風邪をひいているのだし布団も大きめだからと二人同じ布団で並んで寝かされルルーシュは苦しそうに唸る。

「暑苦しい・・・。」
「熱が出てる証拠だろ・・・。」

 擦れた声で答えるのは隣で眠るスザクだった。
 スザクの言葉にルルーシュは鬱陶しいと布団から蹴り出そうとするが、風邪をひいてもスザクの力はまだまだ残っているらしく、しっかりとへばり付いて布団から追い出されまいとする。

「氷嚢もう溶けちゃったのか・・・?
 俺の使うか。」
「ずれ落ちただけだ。冷やっこい・・・。
 何か今度は悪寒がする・・・。」
「俺も寒いよ〜。苦しい〜。」
「馬鹿がひくのは夏風邪じゃないのか・・・。」
「ルルーシュ、俺の事そう思ってたんだ。酷い。」
「お二人とも静かに寝ないと風邪が治りませんよ!
 山中さんがいらっしゃらないんですから、今日は私がお二人を看護します。
 お食事はもう少ししたら用意しますね。」

 唯一元気なナナリーが二人を窘める様に言うと二人も黙り込む。
 元々会話により痛めた喉に負担がかかる。それでもしゃべってしまうのはひたすら眠るこの状況に飽きたからだ。
 しかし、風邪を治すには大人しくして体力を少しでも回復するのが一番。
 年下の女の子に窘められるのも恥ずかしいと二人は出ていた肩を布団を引き上げて覆う。
 気配で二人が大人しくなったとわかったナナリーはにっこりとほほ笑み傍に控えているSPの一人を連れて台所へと向かった。
 本来ならば家の事には一切関わらない彼らも主人である枢木首相の一人息子も一緒に倒れているこの状況を放っておくことが出来ないらしく、家政婦がいないと聞いて交替で一人だけ看病を手伝う事にしたらしい。
 全ての説明に『らしい』と付くのはルルーシュ達が直接彼らから聞いたわけではないからだが、そうでもなければ彼らが家に立ち入る理由はない。
 やかんをガス台に乗せる音が聞こえてくる。それを行ったのは恐らくは枢木家のSPだろう。
 車椅子のナナリーではガス台には手が届かない為、火を扱わせるのは危ないと判断したと思われる。
 その証拠にナナリーが何かをがさごそ弄りながらSPに自分が持っている物の状態を確かめる声が微かに聞こえた。
 それでも心配なのかルルーシュは熱でぼーっとした頭で考え妹の身を案じる。

「ナナリーは・・・・・・。」
「大丈夫だろ。SPがついてるし。
 それより腹減った。」
「お粥・・・作って来る。」
「まだ熱が高いのに無理するな。」
「レトルトの粥を買い置きしていないんだ。
 お茶か何かを用意してくれている様だが、食事を取らないと薬も飲めないだろう。」

 無理に身体を起こすルルーシュの腰にスザクがへばり付いて止めようとするが、ルルーシュの意思は固い。
 ふらふらになりながらも掛け布団を押しのけ立とうとする。
 自分もふらふらながら、スザクは一生懸命ルルーシュを引き止めた。再び力比べ状態になろうかと言う時、部屋のふすまが開いた。

「お二人ともまた起きているのですか?
 呼ぶ前に起きたら駄目じゃないですか。
 お食事出来ましたからご飯を食べて薬を飲んだらちゃんと寝るんですよ。」
「出来た?」
「さっきお湯を沸かしたばかりだろう??
 というか、レトルトの粥は無かったはずなのに・・・。」
「はい。お粥は無理でしたけどこれなら私にも作れるってスザクさんもおっしゃってたでしょう?」

 むぉ〜ん

「「ふぐぉおっ!」」

 笑顔でナナリーが差し出したお盆の上では三つのコップに似た入れ物。
 紙で出来た蓋の隙間から元気な時ならば食欲をそそりそうな香りが強烈な存在感を示している。
 しかし、病人には優しくないと誰もが知っていた。
 実際ルルーシュとスザクも風邪の影響で食欲がない上に、匂いが少なく消化の良い物を胃が欲している。
 しかし目の前にいる少女はそんな二人の気持ちに気づかない。

「日本のヌードルです。
 お湯を入れるだけで直ぐ出来るって本当でした。」

 「びっくりです。」と無邪気に微笑むナナリーに言えるわけがない。
 ルルーシュは実の兄であり、スザクもナナリーを妹の様に思っている。
 妹が兄の為に作った食べ物を無下に断るわけにはいかない。

《《お兄ちゃんとして食べなくては!》》

 二人とも同じ事を考えて互いに目を合わせる。
 互いの決意を感じ取り、ルルーシュとスザクは同時に箸を取った。

「あ・・・りがとう、早速頂くよ。」
「ちょっと重い・・・いや、美味しそうだなぁ。頂きます。」
「たくさん食べて下さいねv スザクさん用にお代りは二つ、お兄様にももう一つ用意してありますからvv」

《《勘弁して下さいっ!》》

 それでもナナリーの笑顔を前に二人に何が出来るのか。
 勿論出来ることなどカップヌードルを必死の思いで食べきる以外にない。

《《気が利かないにも程があるだろう! 家にまで入ってきたのなら少しは気を遣え!!》》

 恐らく未だ台所で追加のお湯を沸かしているだろうSPに呪いの毒電波を発した二人。
 その後、問題のSPが枢木家担当から外されたのだが、ナナリーはその理由を知らない。


 END


 落ちは弱いかな?
 何となくでおまけも書いてみました。
 風邪っぴきにインスタントラーメンはキツイと思います。
 私だったら食べたくないですね〜。(笑)

 2008.1.20 SOSOGU

(2008.2.25 GEASSコンテンツへ移動)