お菓子は災いの元 「ハロウィンスペシャル編」

 時期を逸してしまった食卓のハロウィンSSです。
 時期外れでも構わないわvという方のみどうぞ!
「とりっくおあとりーと!」
「・・・何の真似だスザク。」

 毎度毎度の事ながらルルーシュは台所に立ちその日の夕飯の仕度をしていた。
 タンタンとリズミカルに鳴る包丁がまな板を打つ音が続く中、背中に受けた衝撃と言葉によくぞ指を切らなかったとルルーシュは自身を褒めたくなったが背後にいる悪戯坊主はルルーシュの指の危機に気付く様子も無くルルーシュの首に腕を回して懐いてくる。
 鬱陶しいと首を振るルルーシュだが力でスザクに勝てるわけがなく、結局は成すがままの状態を甘んじて受ける他はない。
 スザクはスザクでルルーシュの邪魔になっているのはわかってはいるものの自分の希望優先で支度の邪魔をしながら話し始めた。

「明日のハロウィンの予行演習だって。
 学校で皆でお菓子を持ち寄って各ポイントを回って言うんだよ。」
「発音が間違っている。正しくは『Trick or Treat』だ。」
「ちゃんと言ってるだろ。とりっくおあとりーと!
 そーゆーわけでオヤツちょーだい☆」

 漸く首から手を離したかと思えばスザクの手は相変わらず己の欲望に従順に動く。
 だがしかし、無い袖は振れない。既に本日のおやつはスザクの胃袋に消えているのだ。
 更に言うならば今は夕飯の支度をしているところだ。
 家計を預かる主婦暦ウン十年の日本女性に負けず劣らず冷えた声で「ない。」ときっぱりと言い放ち、ふくれっつらのスザクから顔を背け食事の支度を再開しながらルルーシュは話を続ける。

「Halloweenは10月31日、万聖節の前晩に行われるものだ。
 学校行事だから昼間にやるのは良いとして前日にやるものじゃない。」
「ケチケチするなよ!」
「馬鹿な事言ってないで皿を並べて・・・って、何だその頭。」

 ホコホコと温かな湯気を立てるカボチャの煮つけを持った器を手に振り返ったルルーシュは先程抱きつかれた時には気付かなかったモノをスザクの頭に見つけ目を点にする。
 するとスザクは漸く気付いてくれたかと嬉しそうに笑いながら説明を始めた。

「ああコレ? 明日の為に今日学校の授業で画用紙を使って作った犬耳。
 俺の仮装は狼男なんだ。」
「食い意地のはった君にはぴったりの役だな。だが残念な事に出てくるのはお菓子で原始肉は出ないぞ。」
「うん、確かにそれは残念だ。」
「出たら食べる気だったのか。」
「勿論! それよりもルルーシュ、お願いがあるんだけど。」

《やな予感。》

 こういう時のスザクのお願いはろくなものではない。
 思いついたら即行動の行き当たりばったりな性格のスザクとは対照的にルルーシュは計画重視の几帳面な性格をしている。
 歯車が噛み合う様に上手くタッグを組めればこれ以上無いバランスの取れた二人だが、一度掛け違えれば反発し合うこと受け合いだ。
 とりあえず思い当たる事はと少し考えルルーシュは苦々しい顔を隠さず答える。

「何だ? 夕飯を増やせという要望なら聞かないぞ。」
「そーじゃなくて、明日学校に持っていくお菓子作って。」
「?」
「さっき言ったじゃん。皆でお菓子を持ち寄るって。
 持って行く為のお菓子作って。一クラス分で30人分よろしく。」

 にぱっと笑顔全開で答えるスザクに対しルルーシュは思考を止めた。

 ・・・・・・・・・・・・・

 ギギギと錆びたロボットの様に首を巡らし視線を壁に掛けられた丸時計で留める。
 長針と短針は180℃を示していた。

 只今の時刻、10月30日18時ジャスト

 ぷっちん☆

 時計の示す時間が脳にしみ込みスザクの要望と現在の状況を理解した瞬間、ルルーシュの中で何かが切れた。

「一体今何日の何時だと思ってるんだ!」
「30日の夕方6時。」
「わかってて言うのか君は!」
「だってスナック菓子を持ってくなんてつまんないし皆そんなの食べ慣れてるし。
 手作りお菓子ならルルーシュのは絶対美味しいしウケると思うんだ。」
「僕の準備時間と手間と睡眠時間は全く考慮しないのか。
 くそっ! 今から急いで出て商店街までは徒歩約30分。いつもの店が閉まるのは18時30分頃のと遅い方も19時30分! 最悪な事に帰りは完全な夜道とくる!!!」
「何で慌ててるんだ。小麦粉と砂糖はあるんだろ?」
「いつもの三人分なら焦る必要はない。だが君は一体何人分を作れと言った?
 いつもの十倍、小麦粉砂糖、さらにバターが足りない。ギフトラッピング用の袋やリボンだって無いんだぞ!!?」

《そのうちルルーシュの血管切れるかも。》

 スザクはのんびりとそんな感想を持ちながらも捲くし立てる友人をさて置いて、のほほんとした顔で納得したとでも言うように手を叩き答える。

「そっか、そういえばそのまま持ってけないよな。」
「気付くのが遅い。仕方ない・・・ナナリー、ナナリー!」

 スザクを置いて今へと走りこみながら叫ぶルルーシュに対し返事は直ぐに来た。
 畳に座り込み何やら手元に何かを抱え込みながら楽しげに笑っているルルーシュ最愛の妹ナナリー・ヴィ・ブリタニアは慌て気味の兄とは対照的にほんわかとした雰囲気を纏いながら尋ねる。

「どうされたんですかお兄様。」
「僕達は急いで買い物に行かなくてはならなくなった。
 夕飯が遅くなってしまう上にナナリーに留守番を・・・・・・・・・・ナナリー? ソレは何だい??」

 ソレと言われて直ぐに思いつかなかったのか小首を傾げるナナリーだったが、さわさわと手元で音を立てる物の事だとわかり笑顔を深くして答えた。

「スザクさんに頼まれたんです。こうしてビニールテープの束に櫛を通すとふわふわして気持ちいいんですよ。」

 なるほど確かにふわふわしてさわり心地が良さそうだとルルーシュも思うがその正体がわからない。
 茶色のビニールテープの束は一部が櫛により細く割かれていて一部はまだ帯の形を保っている。
 全てに櫛を通したら随分と嵩が増えそうなその代物の用途は何なのか?
 全く思いつかないと首を捻るルルーシュの傍らで頼んだ張本人は満面の笑顔で答えた。

「狼男の尻尾。仮装の小道具、全部は学校で作れなくってナナリーに手伝って貰ってるんだ。」

 ぱこん!

 答えを知った瞬間、ルルーシュの反応は早かった。
 履いていたスリッパを手に取りそのままスザクの頭へと叩きつける。
 それでも理性が働いたのか狼の耳の間で仮装道具へのダメージを避けるが、その為にスリッパを縦にし特に固い部分が脳天に直撃しスザクはちょっぴり涙ぐんで叫び返す。

「いてぇ! 何すんだよルルーシュ!!」
「ナナリーに雑用させるな!」
「あの、お兄様。楽しそうだったので私が頼んでやらせてもらっているだけですから。」

 そこから一気に喚き始めるルルーシュと対抗して暴れるスザクにナナリーは二人を仲裁しようと声をかけるが鈴の音の様に小さなナナリーの声は二人の耳には全く届かない。
 それでもと更に声を掛けようとするナナリーに家政婦山中がやんわりと押し止め言った。

「言っても無駄ですよ。それよりも貴女の魔女帽子、出来ましたよ。」
「有難うございます。後は黒いワンピースと箒ですね。」
「お下がりで良ければ娘のを持ってきましょう。
 箒は重いですから適当な棒に星の飾りをつけてはどうです?
 手間が掛からず直ぐに作れますよ。」
「魔法のステッキですね。明日が楽しみです。」

 スザクが学校のイベントでハロウィンの仮装をすると知り面白そうだと呟いたナナリーの声を聞きとめたのはシスコンのルルーシュではなく山中だった。
 基本的に彼女のは二人に辛く当たりはしないが特に親切と言うわけでもない。
 気まぐれの様に「衣装作りを手伝いましょうか?」と問う山中の声にナナリーは一も二もなく頷いた。
 見せる相手は兄とスザクぐらいだがそれでも心がウキウキとするのは自分にも出来る何かがあると思えるからか。
 嬉しそうに笑うナナリーに対し山中もにっこりと笑い応えた、が、前述した通り彼女は特に親切というわけではない。ナナリーに手伝いを申し出たのにはそれなりの理由があった。

「こんな事で時間を潰している場合じゃなかった!
 行くぞスザク!! 全速で走るぞ!!!」
「買い物籠は・・・あったあった。それじゃ山中さんナナリーのことお願いね!」

 5分程争っていた二人だが時間が差し迫っているのに気付いたルルーシュが財布を掴んで飛び出したのをきっかけにスザクも後を追う様に買い物籠を抱えて走り去って行った。
 ドアが閉まる音を確認すると山中はゆっくりとナナリーに向き直る。気配で彼女が何を言いたいのかを察したナナリーは言った。

「・・・ステッキ作ったらお兄様の分も作りましょうか。
 でも何にしたら良いのでしょう。」
「それなら名案がありますよ。」

 にたり

 何やら企む家政婦から雰囲気を感じ取ったナナリーは不思議そうに首を傾げながらも可愛らしい笑顔で頷いたのだった。



 * * *



 ハロウィン当日の午前10時
 枢木家の居間には黒髪の少年ルルーシュが一人毛布に包まって眠っていた。
 いつも通り朝食を作り三人で食事を取り、洗濯機に洗い物を仕掛けてスザクを送り出し朝食の後片付けをして洗い終えた洗濯物を干す。
 通常はその後ナナリーの相手をするのが毎日の倣いなのだがこの日の彼の疲労は既にピークに達していた。
 前日は大急ぎで商店街に走り閉店間際で店じまいをしている店主達に頭を下げて材料とギフト用のラッピングを買い。再び走って帰って夕飯の支度の続きを行い遅めの食事を三人で取ると後片付けと平行してスザクに持たせるハロウィン用の菓子にバナナのパウンドケーキとカボチャのスコーン作りをし、焼きたてではラッピング出来ないので冷めるのを待つ間に本日の洗濯物をたたんで片付け、ナナリー一人を土蔵に寝かせられないからとスザクの部屋にナナリーを泊まらせたルルーシュは真夜中までかかって30人分のお菓子を用意したのだ。
 器用なルルーシュの手により包装されたお菓子は一見素人が作った様には見えない程綺麗だった。
 これで製造場所や原材料、賞味期限を記したシールを貼ったら店で売っている商品と変わらないだろう。
 それらを持ち運びし易いように大きめのバンダナを大きな手提げ籠に敷きお菓子を詰めたところでルルーシュは力尽きた。
 けれどそこで終わるわけにはいかない。
 平日である以上、いつも通りに仕事をこなさなくてはと就寝時間がかなり遅かったにも関わらず早起きをしていつも通り働いたルルーシュは10時頃にはヘロヘロ状態。
 今にも倒れこみそうなルルーシュに家政婦の山中が言ったのだ。


「今日は少し昼寝をされては如何です?
 ナナリー皇女とお昼頃少し散歩する約束したのでお昼前に起こしてあげますよ。
 貴方のことです。心配だから一緒に行くのでしょう。」
「当たり前です。しかしお聞きしたい。一体何時ナナリーとそんな約束を?」
「ぼっちゃんと二人で買い物に出かけられていた間に。
 今日は商店街も簡単ながらイベントを催すとの事でしたのでお話したら是非行ってみたいと。」
「この家を出る事が僕達にとってどれほど危険な事か貴女ならご存知のはずですが。」
「SPは付いていますし悪ガキの殆どは学校に行っていて今商店街にいるのはズル休みしたか病欠した子供くらいでしょう。皇子にちょっかいかける元気があるなら学校へ行けと説教されるのがオチですし、私も正当な理由を盾に追い払いますよ。
 それにあの商店街は商魂逞しい店主が多いですから人種はさておき『客』+ご近所の奥さんを邪険に扱う事はしません。」
「物さえ買えば・・・ですか。どちらにしろ青果店には行かなくてはいけないから良いですけど。」
「何か買い忘れていたものでも?」
「昨夜の果物は全部おまけでしたからお礼の品を持って行かなくてはいけないから。」

 テーブルにぽつんと残っているパウンドケーキとカボチャのスコーンが一袋。
 可愛らしくオレンジ色のリボンで飾られた手作り菓子の内容と昨夜ルルーシュ達が運んできた食材を思い出す。
 小麦粉・カボチャと少々黒い色の方が多いのないかと思われるバナナが入ったダンボールを意気揚々と抱えるスザクとどんよりと暗い影を背負い俯き加減で卵とバターが入った籠を持つルルーシュ。
 思えばあの時のルルーシュは少々耳が赤かったような気がする。
 何があったか知らないが店主がおまけと称したものの代わりに作った菓子を持っていくのなら物々交換と変わらない。

「ギブアンドテイク・・・ですか。昨夜何があったんです。」
「・・・バナナを買うお金が足りないので諦めようとしたらスザクが値切ろうとしたんですよ。」

 ああ、と山中は頷く。
 負けん気のスザクの事だからダメだと言う店主を相手に挑発した上で騒いだに違いない。

「熟し過ぎたバナナでこの値段はありえない。良くて一房10円だと言って聞かなくて・・・。」
「それは無茶でしょう。」
「無茶ですよ。でもスザクが大声で喚くので閉店した周囲の店の人達が騒ぎに気付いて集まって来て・・・。」

 それ以上は何があったとは訊けなかった。
 何より昨夜のスザクの機嫌の良さからして店主が負けたのはわかり切っている。
 ルルーシュの言葉や態度からして最終的には無料になったと見て間違いないだろう。
 これ以上話を続けてルルーシュがへそを曲げて外出を取り止める事だけは避けたい山中にとってはどうでもいい問題でもある。
 この話はもう終わりとばかりに「それはそうと」と持っていた黒い服をルルーシュに差し出し山中は言った。

「妹君の仮装に合わせてこの黒いシャツを着て下さいね。
 ケープと帽子は用意したので・・・お昼寝前に着替えてきて下さい。ギリギリまで休めるように・・・ね。」
「お気遣い感謝します。ナナリーには伝えておくのでよろしくお願いします。」


 そんな訳でルルーシュは一時ではあるが足りない睡眠時間を得て疲労回復に勤しんでいるのだ。
 慣れたと言っても敵国の国家元首の実家だ。
 長く暮らした上にスザクという友を得て警戒心は大分薄くなっていたが全く無くなったわけではない。
 しかし流石に昨晩の菓子作りの疲労が濃かったのかルルーシュは掛けていた毛布を直す山中と彼女に連れて来られたナナリーが傍でクスクスと小さく笑っているのにも気付かない程に深く眠っていた。

「これなら大丈夫ですね。」



 * * *



《おかしい・・・何かが変だ。》

 商店街から帰る道のりを歩きながらルルーシュは思い返した。
 世話になった青果店の店主に礼と共に作った菓子を渡した時も店主とその妻がやけににこやかだった上に「珍しいお客も来てるしおまけだ。」と言って焼き栗をくれたのだ。
 だがここまで彼らは親切だっただろうかとルルーシュは首を傾げた。
 その後も商店街を歩いていると店主達がにこやかにこちらを見つめていたり笑いを堪えている様子が気になった。ナナリーが魔女の仮装をしている事が原因だと思っていたがどうも違うような気がする。
 「たまには外食をしましょう。少しくらいならおごります。」と山中に言われて入った蕎麦屋も始めは驚いた様子だった。恐らくブリタニアの皇子と皇女がこんなところで食べると思わなかったのだろうと勝手に納得し、気にしてもしょうがないと出掛けに山中に被せられた帽子を取ろうとしたのだが若い女性店員がルルーシュの手を押さえて止めた。

「髪の毛がサイドから落ちると食べ難いから帽子は被ったままの方がいいわ。
 帽子で髪が押さえられてるし妹さんみたいに髪を縛れるわけじゃないでしょう。」

 確かに理屈はわかるが何かが違う気がした。
 けれどはっきりとその理由がわからないルルーシュは黙って店員の言う通りにしたのだが・・・。

「あら鍵が開いてる。ぼっちゃんもう帰っているのかしら。」

 帰り着いた枢木家のドアの鍵を開けようとして手応えの無さに首を傾げながら山中がドアを開けた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 沈黙が落ちる。
 三人の目の前では、まだ仮装したままのスザクが大きめの箱を抱えて固まっていた。

「スザク・・・その大量の菓子を箱に詰めてどうする気だ。」
「だって危ないだろ!? もう直ぐ奴らが押し寄せてくるから隠しておかないと。
 俺はイタズラされるよりもルルーシュの菓子が大事なんだっ!」
「はぁ? 一体何を・・・。」
「「「トリック・オア・トリート!!!」」」

 声は背後から聞こえた。
 複数とわかりルルーシュが振り返るとそこには思い思いの仮装をした商店街の悪ガキが勢ぞろいしていた。
 つまり・・・。

「いつもルルーシュいじめてる癖にこういう時だけ図々しいぞお前ら!」
「バッ・・・スザク、ナナリーの前で!」
「お兄様、今の話は・・・。」
「違う! そう、悪ふざけだ。悪ふざけしているのを見てスザクは勘違いしているだけだから!!」
「本当に?」
「ルルーシュそんな事よりこいつら追い返すぞ!」
「君は黙ってろ!」

 怒るルルーシュだが状況は全く変わらない。
 それどころか悪ガキ達は一気に玄関の中へ雪崩れ込み喚き始めた。

「お菓子くれ!」
「学校で食べたの美味かった! まだあるんだろ!?」
「くれたら暫くはちょっかい掛けないからさ。」
「「「お菓子くれなきゃイジワルしちゃうぞっ!!!」」」
「「帰れぇえ―――っ!!!」」




 悪ガキ達は執念深く常備しておいたクッキーの幾つかを詰め合わせて持たせる事で漸く出て行った。
 騒動が漸く終わりを見せ、ほっと一息吐くと同時に俯いたルルーシュの目の前にぽとんと落ちる物体があった。
 頭が軽くなった事からしてそれは帽子と思われる・・・が、その帽子には通常ありえないものが付いていた。

「これは・・・。」
「あら漸く気付いたんですか。皆、優しくしてくれたでしょう?
 可愛い魔女さんと使い魔の黒猫ちゃんが買い物に来たのだから当然ですよね。」
「このネコミミ付き帽子は貴女ですか! っていうか貴女しか出来ないし!!」
「皇女殿下も賛成してくれましたよ。」
「見たかったな・・・黒猫なお兄様の姿。残念です。」
「ナ・・・ナナリー。」
「でもほら、しっぽの感触は楽しめますよ。」
「はっ!? いつの間に僕のズボンにそんなものを!!!」

 黒くてふさふさした長い物体の元をたどり自身のズボンのお尻の部分に行き着く。

「本当に気付いてなかったんですね。しっぽには気付かれると思っていたのに。
 ぐっすりお休みになっているときにちょちょいとくっつけさせて貰いました。」
「そんな事よりルルーシュ! 俺のお菓子なんであげちゃったんだよ!!
 今日のオヤツはさっきのクッキーだったんだろ!!?」
「わぁv お兄様のしっぽフワフワしてて気持ち良い。」
「折角ですし記念写真を撮りましょうか。久しぶりにイタズラが出来て楽しかったですし。」

 皆それぞれ好き勝手に喚き楽しみ笑う中、ルルーシュは混乱する頭で考えた。

《一体何がどうなっているんだ?
 そもそもなんで僕はこんな苦労して遊ばれて菓子をたかられなくてはならなかったんだ??
 今のこの状況は一体何が原因だったんだ!!?》

「ルルーシュぅ〜。お腹減ったよ。簡単なのでいいからオヤツ、オヤツ、オーヤーツー。」

 ふと視線を下に向ければルルーシュの腰にしがみついて強請る仔狼男が一人。

《ああ、そうだ。全ての原因は君からだったね。そして君を動かしたモノは・・・。》

「スザク。」
「何か作ってくれるの!?」

 話を聞いているのかいないのか。
 スザクの訴えに全く反応を示さなかったルルーシュからの呼びかけに腹の虫が鳴き出す寸前のスザクは頬を喜びの色に染めて友人を見上げた。
 そこにいるはロイヤルスマイルを浮かべるルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 機嫌の良さそうなルルーシュに今夜の夕飯も期待出来そうだと思ったスザクの耳に届いたのは信じられない返事だった。

「一週間、お菓子なしだ。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「何でぇええっ!?」
「色々考えたが今までの騒ぎや苦労の原因は君に頼まれた菓子に原因があるという結論に達した。
 災いの元に誰が好き好んで関わりたいと思う。
 だが君は納得しないだろう。だから期限をつけてやる。一週間お菓子なしだ。
 どちらにしろさっきの奴らに殆ど持って行かれたし、残ったお菓子はナナリーだけなら十分な量だから良いだろう。」
「俺は良くない!」
「一ヶ月の方が良いか?」

 その一言でスザクは涙を呑んだ。



 その夜。

「山中さん・・・。ハロウィンってお化けの仮装した子どもがお菓子もらえる日じゃなかったの?」
「強請る相手も黒猫の仮装をしてましたからねぇ。」

 帰ってくるつれない答えにスザクは貯金箱のお金を数え、一週間のお菓子をどこで調達しようかとナナリーと相談したそうな。


 END


 ぐっちゃぐちゃ

 それしかいえないお話ですがハロウィン用に途中まで書いていてUPを断念した奴です。
 勿体無いので拍手にこそりとのっけてみました。

 ちなみに、スザクは菓子無しの一週間をナナリーからこっそりと分けてもらう事で乗り切りました。

 2007.11.8 SOSOGU

(2008.1.20 GEASSコンテンツへ移動)