アスランの暴走 |
キラと仲直りしてからしばらくの事。 アスランは10歳の誕生日を迎えた。 誕生日パーティーはアスランの自宅・・・ではなくキラの家。 相変わらず忙しいレノアに代わってカリダがパーティーの支度をすることを申し出た結果だった。 パーティー疲れで帰るのが億劫になることを見越してアスランは始めからキラの家に泊まる予定で着替えなどを家から持ち込んでいた。 パーティーが始まりジョルディやアリシアなどアスラン達と親しくしているクラスメート達が口々に祝いの言葉を述べ、思い思いのプレゼントをアスランに差し出した。 嬉しそうに受け取っては「有難う」とにこやかに笑う。 友人達から一通りプレゼントを受け取ったアスランはキラの姿が途中から消えている事に気付いて部屋を見回すとドアが開いてキラが飛び込んで来た。 「お誕生日おめでとうアスラン!」 キラはそう言ってアスランがずっと欲しがっていたマイクロユニットの部品(子供には高くて中々手が出ない代物)をリボンでラッピングしてあるものを差し出した。 「・・・・・・・・・・・・・・・きら?」 受け取る事も忘れてアスランはあんぐりと口を開いたまま固まった。 他の友人達も驚いてキラに見入っている。 その中で唯一アリシアだけが『大成功』とでも言いたげに微笑んでいる。 先ほどまでのキラはいつもと同じボーイッシュでラフな格好。穿き慣れた色褪せたジーパンに白いシャツ、その上にちょっと大きめな紺のトレーナーを着ていた。 しかし今は違い瞳の色に合わせたのか薄い紫色のワンピースに少し大きめな白いカーディガンを羽織っている。 服で大分印象が変わるとわかっていても普段のキラを見なれた者には劇的な変化だった。 何よりすらりと伸びた手足の白さが眩しい。 恐らくこの格好のまま一人で出歩けば声をかける男がいるだろう。 最悪ロリコン趣味の変態に目を付けられる可能性もある。 それほどキラは綺麗だったのだ。 反応が見られず困ったキラは首を傾げながら皆に問う。 「やっぱりこの服おかしい? ・・・僕には似合わない??」 「「「「「そんなこと全然無いっ!!!」」」」」 首を傾げるキラ。 そんな何気ない仕草が可愛らしく、見惚れて頬を染めたクラスメート達(特に男子)が力いっぱい答える。 しかし彼らがそう答えるにも関わらず未だに凝り固まっているアスランをアリシアが肘で突付く。 不安げなキラの視線を受けて漸く膠着状態から脱したアスランは一気に顔を真っ赤に染めて口元を右手で覆う。 「えっと・・・ゴメン。ちょっとびっくりして・・・・・・。 あのその、綺麗なワンピースだね。」 ごんっ! 言った途端にアリシアの肘鉄がアスランの脳天に直撃した。 悶絶するアスランに「ゴメン腕が滑っちゃった〜☆」等と言いながらアスランに寄り添い小声で、しかし凄みの効いた声で脅す。 「服誉めてどうすんのよ! キラを誉めなさいよキラをっ!!」 イテテテとうめきながら涙目で見上げて再びアスランはキラを見た。 心配そうにアスランに駆け寄ろうとするキラが目に入る。 が、しかしジョルディがキラを押し留めた。 「だいっじょーぶっ!! アスランのことはアリシアに任せて俺達はケーキ食べようぜ☆ ほらキラはここ、俺の隣!!!」 「ずりーぞジョルディ! キラそっちより俺の隣が良いよ★ 日当たり良くて気持ち良いぜ〜♪」 「お前こそ引っ込めケイン!!! キラ、ほらここに特製ハロぬいぐるみがあるぜvvv」 「ってお前それアスランへのプレゼントじゃ・・・?」 キラの席を巡っていきなり起こった揉め事にキラはどうして良いのかわからずおろおろするばかり。 その様子を見てアリシアが怒鳴ろうとした時、それを制してアスランが立ち上がった。 ずっと臥せていた顔を怒りに染めてすぅっと息を一杯吸い込み怒鳴り散らす。 「いい加減にしろお前等! 勝手に決めるな!! キラは俺のだっ!!!」 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」」」」」 ソレまで言い争いをしていたジョルディ達は間の抜けた声で返事をした。 アスランの言葉に「ををっ言うじゃないv」とにんまり笑うアリシア。 自分の発言に驚きながらも顔を真っ赤にしてアスランはキラの反応を待つ。 するとキラは少し考えてから「ああ」と一呼吸置いてからニッコリ笑ってアスランに答えた。 「アスラン『俺の』の後に『隣の席』が抜けてるよ?」 《《《《《だからキラこの場合の反応はそうじゃなくて。》》》》》 思わず脱力するようなキラの天然ボケに争う気も失せたジョルディ達は「あ〜そうだな〜。」と言いながらキラをアスランの隣の席に薦めた。この辺はかなり同情が入っていたかもしれない。 アリシアも流石に「はあぁ。」と溜息を吐き、ぽんとアスランの肩を叩きながら言ったのだった。 「そろそろ幼馴染兼親友の壁を崩しておいた方が良くない? このまま放っておくとキラが掻っ攫われるわよ。」 この言葉をきっかけにアスランの暴走が始まる。 季節は冬。 12月に入り、街がクリスマスの準備に染まった頃の事。 アリシアはキラに相談があると持ち掛けられて放課後にファーストフード店で待ち合わせをした。 キラは委員会があるせいで少々遅れると先ほど連絡が入り、店の奥の席で一人でジュースをすすりながら道行く人たちを眺めながら10月のアスランの誕生日パーティーのことを思い出していた。 あの時キラに普段着ることの無いワンピースを着せたのはキラの母カリダとアスランの母レノア、そしてアリシアだった。 いつもズボンばかり穿いてスカートなど見向きもしないキラを残念に思っていたのはカリダだけで無くレノアもそうだった。 何よりも二人には夢があったのだから。 アスランの誕生日より1週間ほど前にカリダはアリシアに連絡を取りキラがいない時を見計らって家に招待し話を持ちかけたのだ。 「親の勝手とわかっていても夢を持ってもいいと思わない?」 「・・・・・・・・・小母さん何が言いたいのかわかりません。」 一口紅茶を飲んでから開口一番にカリダが言った言葉にアリシアは冷めた声で返した。 《こういういきなり脈絡も無く話すこところってキラに似てるわよ。》 特に役に立たないヤマト親子の共通点を冷静に見つけてしまうアリシア。 ふっとカリダの隣でニコニコ笑っているレノアに視線を送る。 すると不敵な笑みを浮かべてレノアが話し始めた。 「アリシアちゃんはキラちゃんのことどう思ってるかしら?」 「・・・大事な友達と思ってますけど。」 「そうね、私とカリダとカレッジで出会ってからの付き合いになるけど今でも大切な友達だと思ってるわ。 そしてカリダの幸せを願ってるの。」 「私もレノアに幸せであって欲しいと思ってるわ。 だから私達二人に共通する幸せが欲しいのv」 「・・・・・・・・・・。」 《共通の幸せ・・・?》 二人の言葉にちょっとありがちなネタが頭に浮かんだがありがち故にキラの幸せと直結しているかは疑わしい考えだった。 しかしそんなアリシアの思いを打ち砕くように二人は声をハモラせながら言った。 「「アスランとキラが結婚したら私達友達で家族よね〜vvv」」 ぶっ!!! 丁度紅茶を飲み込む瞬間であったために思いっきり咽てしまった。 先ほど頭に浮かんだ考えを肯定されてしまい頭を抱えたくなるアリシア。 《そこにキラとアスランの意思は皆無ですかっ!!?》 しかし声に出す事は出来ず、アリシアの心中を知ってか知らずか母親二人はあらあら大丈夫?と言いながらも楽しげに話し続ける。 「だって折角子供が男の子と女の子なんだもの。 やっぱり一番の友達の子と仲良くなって欲しいし、そのままゴールインしてくれれば一生不可能と思われていた親類関係にもなれるじゃない?」 「そうして孫が生まれたら二人で世話するのv きっと可愛いに決まっているものね〜♪」 「でもキラはあくまで友達関係に拘っているみたいだし。」 「アスランはそれ以前の問題。キラちゃんの性別誤解してたせいで全く意識してないのよね。」 「「と、いう訳であの二人の幼馴染兼親友の壁をぶち壊すの手伝って☆」」 半分脅しが入っているのではないかと思うくらいに静かな恐怖を孕んだ笑顔にさすがにアリシアも退いたが、ここであっさり折れてはキラに申し訳ないとささやかな抵抗を試みる。 「それで私が素直に協力するとでも?」 「別に手伝ってもらえないならそれでもいいのよ? ちょっと時間がかかるかもしれないけど自分達だけで何とかする自信はあるし。」 「その代わり面白いものが見れなくなるわよ。」 ニヤリと笑うレノアにアリシアは興味惹かれて視線を送った。 そんなアリシアの様子に深く透明度の高い翠の瞳を悪戯な光を湛えてレノアは答えたのだった。 「あの堅物で澄ましたアスランの間抜け顔を見てみたくない?」 アリシアが堕ちた瞬間だった。 実際あの誕生パーティーの時のアスランの顔は見物だった。 あの時パーティーに誘われた女の子はキラを除けばアリシアのみ。 その為未だにアスラン狙いのクラスの女子はキラをライバル視する事は無い。 もし知っていたのならとっくにキラに釘を刺しに行くかアスランに更にアプローチし始めるかするはずなのだから。 もちろんジョルディ達からキラの話が洩れる事の無いようにしっかり脅しつけておいた。 アリシアだけでは完全に皆の口を閉ざす事は不可能だっただろうが口止めの時にはとても心強く怖い人物が一緒にいたのだ。 レノア・ザラ アスランの母であり、プラント最高評議会国防委員長パトリック・ザラの妻であり、自身も遺伝子工学の権威としてキャベツ等野菜の品種改良に心血を注ぎプラントの食料生産を担う農学博士である。 『今日のキラちゃんの事話したら・・・どうなるかは話したらわかるわv ここで何をするか言ったら貴方達しばらく外歩けなくなるかもしれないしvv』 笑顔で、しかもえげつない事を考えてます口調で言うレノアにジョルディ達は顔を白くしながら機械の様に頭を縦に振った。 何よりもその雰囲気に押されたのだ。 アスランそっくりの綺麗な顔で黒いオーラを漂わせるレノアは子供達にとってはまるでRPGのラスボス大魔王。 この人を敵に回してはいけないと子供達は本能的に悟らせるレノアにアリシアは尊敬の念を抱いた。 その後、レノアとカリダは色々と手を回して二人が少しは進歩するようにしているのだがこれが中々難しく上手くいかない。困った二人はアリシアにまた更に協力を依頼した。 もちろんアリシアが断る理由など無かった。そして今、アリシアはここに居る。 「ごめん遅れちゃって! 待った?」 全力疾走してきたのか息を切らしながら店に飛び込んでくるキラに考え事を止めてアリシアは微笑みながら答えた。 「大丈夫よ。それよりこの後に私も用事があるから話を聞かせて?」 「うん。」 そう言ってキラはジュースとポテトを購入してからアリシアの前に座った。 話すのに少し躊躇いがあるのかキラはカラカラとストローでコップの中身を掻き回してテーブルに目を落とす。 時々アリシアの方に目をやっては困ったような顔を左手で支えて肘をつくキラに痺れを切らしたのかアリシアが先に口を切った。 「キ〜ラ? 話したい事あるんじゃなかったの??」 「うん・・・そうなんだけど・・・・・・。 その前にちょっとアリシアに訊きたい事があるんだけど。」 「何を。」 「アスランのこと。最近変だと思わない?」 「キラはアスランの様子がおかしいと思うのね。」 「うん・・・前は部屋で課題をやったりゲームして遊んだり、遅くなったらお互いの家に連絡して一緒のベッドで寝たりしてたのに最近嫌がるの。」 「さすがに一緒にお風呂は入ってなかったか・・・。」 「アリシア?」 「いや別に。いいから話続けて。」 「それから遊びに行く場所はいつも公園でバスケとかマイクロユニット関係の専門店とか・・・観に行く映画もアクション物やお笑い物、他はアスランの趣味の歴史物やドキュメンタリー系ばかりだったのに『たまには趣向を変えてみよう』とか言って遊園地や恋愛物の映画に誘ってくるの。 買い物だってたまにはスカートとか可愛い服見てみようっていつもは近寄るのも嫌がるフリフリレースで有名なブランドの店に引っ張ってくんだよね。」 「普通は逆よね。キラがそういうの誘うべきじゃない?」 「嫌だよ。遊園地よりバスケとかサッカーとかで遊んでた方が楽しいしお金も掛からないし、大体遊園地一回行ったらその月のお小遣い吹っ飛んじゃうよ。服代だって馬鹿にならないしいつもはお母さんと一緒に買ってるしね。」 「お金が足りないならアスラン君に出してもらえば?」 「そういうのってよくない。アスランは友達・・・ううん親友だもの。」 「フフ、キラのそういうところ好きよ。 ジョルディ達もそういった事を気にするようなタイプじゃないけど、アスラン君狙いの子の中にはアスラン君の家がお金持ちっていう部分に重点を置いている子もいるのよ。」 「そうなの?」 「そうよ。」 姉弟の様に育ったせいかキラはアスランの家の事など気にしたことは無かった。 というよりもレノアが仕事で忙しく研究所に泊り込む時期は子供一人では危険だとキラの家で過ごす事の多かったアスランは自然とキラと共にカリダの教育方針に沿った育ち方をし、とてもプラントに行けば良家のお坊ちゃんとして扱われるとは思えない程、生活水準も経済観念も庶民じみていた。 そんなアスランと一番長く一緒に過ごしていたキラからすればアスランと家柄が違う事など全くわかるわけが無い。 レノアにしても子供をちやほやと育てるのではなく、とにかく学べと家事手伝いは当たり前。基本的な生活能力が備わるようにと身の周りの事は出来るだけアスラン自身にやらせるようにしていた。(・・・家を留守にしがちなレノアなのでこの教育方針は一石二鳥とも言えるのだが。) だからと言ってお小遣いもキラと同じかと言うと実はそうでもない。 レノアが与えなくても意外と子煩悩な父親であるパトリックがこっそりとアスラン個人の口座に「必要になったら使いなさい。」と折りを見て振り込んでいたのだ。もちろんレノアは気づいていたがアスラン自身が使う気が無かったらしく日々貯まっていくその口座を放っておいた。 が、キラにそう言い出したという事はアスランは最近において方向性を変えたらしい。 《あの堅実なアスラン君がそんなこと言い出すとはねぇ・・・。》 キラの話にアリシアがどうした答えたものかと考えているとキラは更に暗い顔をして言った。 「何よりね、アスランと服を買いに行くのだけは避けたいんだ。」 「へ? どうして??」 「だってアスラン、服の趣味悪いんだもん。」 《それは一番重大な問題かもしれない。》 とりあえず話を聞いてもらえただけでも楽になったのか時間が迫ってしまったので「また相談にのってね。」と言って店から出て行った。 アリシアはそんなキラの後姿を眺めながらキラの話を反芻する。 《最近アスラン君がお金をかけ出したか・・・確かにこの間のパーティーの効果はあったみたいだけどちょっと暴走気味みたいね。無茶苦茶やる前に釘刺しておかないとキラが泣いちゃうな〜。 面倒臭〜い。やっぱ小母さん達の頼みなんて引き受けなきゃ良かったかしら。 それにしてもいつも無難に服を着こなしていると思ってたら今までずっと小母さん達がトータルコーディネートしてたとは恐れ入ったわ。黄色のタートルネックに赤のコート・・・そりゃあキラが嫌がるわけだ。小母さん達がいなくなったらアスラン君どうなるのかしら?》 そこまで考えてアリシアが店のドアに目を向けると急いで来たらしい少年が一人、息を乱しながら店内を見回していた。 アスラン・ザラ アリシアとキラが話題に出していた問題人物はアリシアが手招きしているのを見てウーロン茶を買ってから席についた。 「悪い待たせた。」 「いーわよ別に。それにしても何だってそんなに急いで来たのよ。 約束の時間はまだ10分は先だったのに。」 「この後キラの家に行く約束があるんだ。」 「あ、そう。じゃあ手短にお話するわね。 まずキラとの関係改善に努めるのはいいけど財力使うのだけは止めときなさい。 キラは家柄目当てにまとわりついてくる子達とは違うんだから。 それから急に趣味を変えようとするのも駄目。ロマンス系の映画もいいけどきっかけが無いのにいきなり観たいって言ってもキラが戸惑うに決まってるでしょう。もうちょっと時期を見てからにする事。 後、服選びについてだけど・・・自分の服選びさえまともにやらずに小母さん達に頼り過ぎてる状態でいきなりキラの服が選ぶの止めなさい。確かにそういうきっかけもあると言ったのは私だけど普段の貴方の服を選んでいるのが小母さん達だと知っていたらもうちょっと考えたわ。」 「・・・アリシア。メモを取るからもうちょっとゆっくり話して。」 「これっくらい覚えなさい。」 アスランが席に着くと同時に始まったアリシアのマシンガントーク。 早い話、本日のアリシアの予定とはキラとアスランの恋愛相談である。 キラ自身はそんなつもりは無く、急に態度が変わったアスランに戸惑っているだけだがアスランは違った。アリシアとレノア達の努力の結果大分恋愛的な面でキラを意識するようになってきていた。結果として少々暴走気味になり行き詰まる度にアリシアに相談するようになったのが玉に傷だが・・・。 それから延々30分もアリシアはアスランに愚痴にも聞こえる参考意見を聞かされ続け、いつもの端正な顔に疲れを浮かべて漸く話に途切れを見つけて地を這うような声で訊き返した。 「具体的に・・・俺は一体どうしたらいいんだ?」 「そうねぇ。キラはまだまだその手の話にはついていけないからもうちょっとキラのテリトリーに踏み込んで様子を見た方が無難じゃないかしら。 例えばキラ自身の為になる事をしてもっと信頼を勝ち取ってみたらどう?」 《下手にアスラン君に一般的な恋愛講義をするとその暴走行動にキラを怯えるのが目に見えてるんだから・・・。 そうなるとキラが可哀想だしねv》 キラを想い少しアスランの暴走を抑える為に言った言葉だった。 アスランはその言葉を受けて困惑しながらもアリシアに礼を言ってキラの家に急いで行った。 《しばらくはあの二人が拗れる事は無いでしょう。》 が、アリシアはその翌日にアスランと言う人物の行動を読みきれていなかった事を知る。 「アスランの馬鹿馬鹿! よりによってハンバーグに人参とピーマンそれにセロリまで入れること無いだろーーーっ!!」 「何言ってるんだ好き嫌いは良くないっていつも言ってるだろ!? それにもう10歳になったんだから何でも食べれるようにならなきゃ!!」 「僕はこの三つの野菜を食べると蕁麻疹が出るの!」 「嘘付けっ! 小母さんが作った人参入りや前に俺が作ったピーマン入りのハンバーグ平気で食べてただろうが!!」 「っ!? 前に作ってくれたアレに入れてたの!!? 酷い! 僕を騙したんだね!! アスランの馬鹿!!! 大っ嫌い!!!! しばらく家に来るなーーーーーーっ!!!!!」 朝教室のドアをくぐると同時に響いたのはキラとアスランの喧嘩する声。 あまりの状況にアリシアは二人を避けるようにして先に登校していたジョルディに話しかけた。 「ねぇコレ一体どうしたの? あの二人何で喧嘩してるのよ。」 「あー、何でも昨日アスランがキラの好き嫌いを直す為に特製ハンバーグを作ったのが原因だって。 キラの嫌いな野菜TOP3を全部ぶち込んだもんで流石にバレてさ。キラが「騙すように食べさせるなんて酷い」って怒ってんだよ。アスランは「キラの為にやったのに何で怒るんだ」とこれまた怒って・・・いつも一緒に登校してくるのに今日はバラバラで出てきて顔合わせた途端にアレだよ。」 「何で止めないのよ。」 「俺は馬に蹴られたくないもーん。」 ジョルディのお気楽そうな返事に頭痛を感じた。 確かにアリシアはアスランの暴走を抑える為に「キラの為になることを」と助言したがどうしてこんな方向に行動を暴走させるのだろう。 悩みがまた増えたと暗い顔で席に戻ろうとするとそれと止める声が二人分響いた。 「「アリシアっ!!」」 ぎっくーーーーん 少々ぎこちない動きで振り返れば頬を高潮させ握り拳を構え、怒りを露わにしたキラと同じく普段は穏やかでキラ以外には眉一つ動かす事も稀だといわれているアスランがキリキリと眦を上げた状態で立っている。 そんな二人に怯えの混じった声でアリシアは答えた。 「な・・・何?」 「アリシアだって酷いと想うよね? アスランってば僕が嫌がる事するんだよ!」 「何だと? そうやってお前を甘やかすのは良くないからお前の為にしたのに! アリシアだって俺がやったことは正しいと想うよな?」 「正しくなんか無いよ! アスランは騙まし討ちするように僕に人参とピーマンとセロリを磨り潰して入れたハンバーグを食べさせたんだよ!? 僕が嫌いだって知ってるくせに!!」 「そうやって好き嫌い言ってると栄養バランスが崩れるだろうがっ! お前は大人になってからもそうやって食べないつもりか!!」 「もおっいーかげんにしてーーーーーーっ!!!」 《私・・・これからアスラン君が暴走する度に巻き込まれるのね・・・・・・。》 安易に頼まれ事を引き受けるんじゃない。 10歳にしてアリシアが学んだことだった。 END 大変お待たせして申し訳ありません。 久々の「萌えないゴミ」の更新です。そんでもってオリキャラ「アリシア」ちゃん視点♪ 予定としては後2話で終わることを想定しております。 甘々なお話を期待されている方がいらっしゃったら・・・申し訳ないですがそれはありえません。 私の書く話でそんな素敵小説が書けるわけがないんです!(←えばって言うな。) 次のお話は題名から大体予想がつくと想いますが桜のシーンですv 気長〜にお待ち頂けると有難いです。 2004.1.12 SOSOGU |
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